◆恐ろしさと同時に面白さも漂わせる(70点)
ドイツのある高校で教師ベンガー(ユルゲン・フォーゲル)は、独裁政治の特別授業を担当することになる。ベンガーは自ら指導者となり、独裁制の体験学習を実行する。最初はやる気のなかった生徒たちも次第に魅了され、学校外でも様々な活動をやらかしていく。その活動は、ベンガーの予想を遥かに超越するほどエスカレートしていく……。
1967年、アメリカで実際に起きた事件を現代ドイツに置き換えた心理系サスペンス・スリラー。本国ドイツでは、08年度の興行成績一位を記録した。
生徒たちが独裁体験に魅了されてチーム名(ウェイヴ)やロゴ、敬礼ポーズ、全員白いワイシャツを着用のルールを決め、結束力を強めていく。ロゴステッカーを街中の建物に貼りまくっていくシーンは、本作の見所である集団狂気の恐ろしさを感じさせる。だが、スピーディーかつテンポの良い描写からは、恐ろしさと同時に面白さも漂わせる。集団狂気の恐ろしさは、後半の水球部の試合シーンでも描かれ、最後の集会シーンでピークに達する。そして、衝撃的なラストが待ちうける。
一見、重苦しさや圧迫感が感じられるようだが、いざ観てみるとエンターテイメントとして楽しめる作品に仕上がっていてその面白さも味わえる。それは、青春映画のテイストをしっかりと取り入れたことだと思える。高校生たちの野外パーティー、演劇練習、部活動(水球部)の練習と試合、パンクファッションのヤンキーとのケンカといった描写が印象的だ。それにしても本作に登場する高校生たちは、飲酒、喫煙、ドラッグを平然とやっているワルばかりだ。こちらも印象深い。
劇中で描かれるウェイヴの活動は、独裁国家と同時にカルト教団にもかなり近いモノがあった。
(佐々木貴之)