前作の良さはどこへいってしまったのか(15点)
前作『the EYE』は、角膜移植された女性が、ドナーの見ていた「この世のものではない何か」まで見えるようになってしまうというアイデアが受け、トム・クルーズが早々にリメイク権を買ったという事でも話題になった。
そして、一躍有名になった監督のパン・ブラザーズ(オキサイド・パン&ダニー・パン)によるパート2とパート3が、このたび日本でも立て続けに公開されることになった(パート3は06年4月29日から公開になる)。タイトルに2とあるが、背景世界は共通しているものの、物語自体につながりはなく、独立した作品だ。
今回も主人公は美しい女性。これを演じているのは、台湾出身で、ハリウッド作品含め多数の映画出演歴を誇る女優スー・チー。男がらみで自殺未遂するなど、精神的に不安定なこのヒロインは、悪いことに不倫相手の子供を妊娠、激しく動揺する。しかも、その頃から霊らしきものが見えるようになり、恐怖の日々を過ごす羽目になる。はてさて、ヒロインと胎児の運命やいかに、というお話だ。
ヒロインの魅力でいえば、前作に引けは取らない。スタイル抜群のスー・チーは、いつもながらカジュアルで年齢不詳な雰囲気が素敵だ。
しかし、斬新なストーリーと映像表現が秀逸だった前作に比べると、この続編の出来はひどすぎる。前半など、霊が定期的にババーン! と出てきて観客を驚かすだけ。おまけにその霊とやらは、CGなんかで描かれたアニメで画面上に丸見え。まったく芸がない。
後半になると、今度は残酷映像で驚かす。芸がないのは同じだが、悪趣味な分、なおひどい。
ストーリーも単調。隠されたネタも小さく、あまりにくだらない。わずか95分間なのに、なんとも長いこと。
オキサイド・パン監督の『the EYE』以降の作品と、この続編をみると、パン・ブラザーズってのはもうダメかなとさえ思う。『the EYE』だけは良かったが、あれが最初で最後の奇跡だったのだろうか。
『the EYE 2』は、3部作の2作目だが、これを見なくても3作目の鑑賞にはほとんど影響はない。よって、よほどの物好きな方以外、あえて観る必要はあるまい。
(前田有一)