◆東京スポーツのトンデモ1面記事を映画化したらこんなふうになるだろうか。“記録映像”と再現映像を並べて見せる手法が面白い(65点)
東京スポーツに載った宇宙人の死体写真やゴム人間の記事を見て、新聞なのにウソを書くなと怒る人は無粋だろう。もし本作を見て怒る人がいたとしたら、同じように無粋だと思う。本作の"記録映像"の真偽については、この際、考えても意味がない。ただ、騙される楽しみを失わないためにも、あくまでも「超常ドキュメンタリー」として見るべきだろう。
冒頭、ミラ・ジョヴォヴィッチが「ナビゲーター」として登場する。物語は「実際の事件」を役者によって再現する形式で進み、再現映像に"記録映像"や"実在する録音テープの音声"が挿入される。時には画面を分割し、再現映像と"記録映像"を並べて見せたりもする。これが意外にわくわくする。再現映像と並べることで、"記録映像"に妙な生々しさが生まれるのだ。
アラスカ州ノームで多くの住民が行方不明になる。夜眠れず、白いフクロウの幻影を見るという住民たちが、催眠療法のため心理学者のタイラー博士のもとを訪れる。催眠療法の映像は、信じられない事実を記録していた。
これ以上のストーリーの詳細な紹介はかえって興味を削いでしまうだろう。本作はなるべく白紙の状態で見た方がよいと思う。
ジョヴォヴィッチはナビゲーターではあるが、役者として再現映像の中でタイラー博士も演じている。本物のタイラー博士も登場し、オラトゥンデ・オスンサンミ監督のインタビューに答えている。観客は役者が役者であることを常に意識させられる。それは、役者の演技で描かれている物語の裏に"事実"が存在することを、常に意識させる仕掛けでもある。
近くロバート・ワイズ監督の「ヒンデンブルク」(1976)がDVDとしてリリースされるが、巨大な飛行船が爆発炎上するクライマックスでは、特撮に当時のニュース・フィルムを編集して盛り込んでいた。特撮ドラマに真実味を与えるため、本物を使ったのである。
本作ではそれが逆になっている。疑わしい"記録映像"に真実味を与えるため、再現映像を使っているのだ。"記録映像"が主で、ドラマ(再現映像)は従なのである。その転倒がとても面白い。はっきりとは見えない"記録映像"もなかなか迫力があった。アイデア勝負の映画なので、そのアイデアに積極的に乗って、転倒した作りの妙を楽しむべきだろう。
米国では軍がUFOを極秘に回収したとされるロズウェル事件が、今も一種の都市伝説のように、ある程度のリアリティーを持って広く知られているという。それが本作のリアリティーを支える背景にもなっている。
(小梶勝男)