“泣き一揆”首謀者の息子・村井との確執と和解のエピソードが映画を感情的に盛り上げる。(点数 40点)
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医者の子に生まれ、才を認められて海外留学した明治のエリート。夢
を追い続け、他人の夢に力を貸し、日本を近代国家の仲間入りさせる
ことに捧げた男の生涯は、まるで中学生対象の偉人伝のようなサクセ
スに満ちている。もともとティーンエイジャーに向けて作られた映画
なのか、主人公が結果を出すまでの苦難や葛藤よりも、いかに彼がブ
レない心を持って生きたかが語られる。過剰に説明的なセリフも、普
段コミックやアニメでしか物語に触れない年齢層への配慮なのだ。
加賀藩医師の息子・高峰譲吉は飢饉に苦しむ農民の姿に胸を痛め化学
者を目指す。優秀な成績で学業を終えた譲吉は、農務官僚を務めた後
に渡米、肥料や薬品などの製造法を発明して財を築く。
譲吉の成功譚の他に、貴子というジャーナリストのインタビューに答
えたポーツマス条約の秘話が興味深い。日露戦争の早期終結の仲介を
ルーズベルト大統領に依頼する伊藤博文からの密命を帯びた金子男爵
に頭を下げられ、ルーズベルトと同窓だった譲吉はホワイトハウスに
働きかけて国難を救う。しかし、このあたりの語り口も虚々実々の外
交交渉には程遠く、パーティと人情に終始する。条約締結の裏には強
引で汚れた駆け引きがあったはずなのに、そこもあっさりとスルーす
るのはやはり対象年齢が低いからなのか。
唯一、“泣き一揆”首謀者の息子・村井との確執と和解のエピソード
が映画を感情的に盛り上げる。といっても村井の一人相撲だが。。
(福本次郎)