RESCUE DAWN - 岡本太陽

クリスチャン・ベール主演、ベトナム戦争映画(75点)

 アメリカにおいて、ベトナム戦争ものの映画はたくさん作られているが、俳優クラウス・キンスキーを起用し芸術的映画を世に送り出したことでも有名なドイツ人監督ヴェルナー・ヘルツォークによって新しい感覚の戦争映画が作られた。その映画のタイトルは『RESCUE DAWN(レスキュー・ドーン)』という。この作品は1997年のヘルツォーク自身のドキュメンタリー映画『Little Dieter Needs To Fly』という作品が基になっている。

 ヴェルナー・ヘルツォークという監督は上でも述べた通り、クラウス・キンスキーを起用した作品で有名だ。『キンスキー、我が最愛の敵』などは日本でも公開されたが彼の作品は日本ではあまり知られていないかもしれない。実際は20年前に撮影された作品だが、今年『Cobra Verde(コブラ・ヴェルデ)』という同じくキンスキーを起用したヘルツォーク監督映画がアメリカでも単館公開された。彼は『Fitzcarraldo (フィッツカラルド)』という作品でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞している。

 今回何故わたしがこの『RESCUE DAWN』という映画に興味を持ったかというと、主演がクリスチャン・ベールだったからだ。背も高く、端正な顔立ちなのに、猟奇殺人鬼を演じたり、激痩せしたり、バットマンになったり、わたしは彼を変態俳優と呼んでいる。今回の映画でもはじめはたくましいアメリカ海軍飛行隊員を演じているのだが、ストーリーが進むに連れてみるみるうちに病的に痩せていってしまうのだ。今回の役は見応えがある。役者根性というかなんというか変態にしかできないと思う。大好きな俳優だ。助演でスティーブ・ザーンやジェレミー・デイビスなども出演しているが、彼らもまた素晴らしい。

 それからこの映画にはエルトン・ブランドというNBA選手がプロデューサーとして参加している。なんと彼は脚本の一部も担当しているということで非常に稀な作品となっている。今までスポーツ現役選手がこのように映画出演以外で映画製作に携わったことがあるだろうか?

 1965 年ベトナム戦争時、アメリカ海軍飛行部隊に所属するドイツ移民のアメリカ兵ディエター・デングラーはラオス付近の爆撃の任務に就いていた。しかしながら彼が飛び立った戦闘機は撃ち落とされ、彼は1人外に投げ出されてしまった。ベトコンに見つからない様に救助隊の助けを待つデングラーだったが、ついに捕虜として捕まってしまった。そして厳しい捕虜生活が始まった。彼は助かるのか?

 この『RESCUE DAWN』という映画は、主演のクリスチャン・ベールもたくましいし、どこかしらカッコいいヒーローが活躍する戦争映画のような始まり方をする。しかし、物語はわたしの予想に反する展開を見せた。これは戦争美化映画でもなく、戦争の悲惨さを伝える映画でもなかった。戦争について公平に描こうと努力している映画も世の中にはあるが、この映画はそういうものとは全く違うものだった。継続性やコミュニケーション、または監禁の映画だった。主に映像に映るのは拷問、隔離、飢餓、また脱出の試みだ。銃の打ち合いや、爆破などはほとんど映らない。物語のメインは同じく捕虜になった人達とのコミュニケーションで構成される。逃げても助かるかどうかわからないが、脱出方法を一緒に考えたり、悲惨な捕虜生活の状況下でありながらも、誰かに誕生日が訪れたらそれを祝い、時には笑い合う捕虜達。非常に人間っぽい作品だった。

 ひとつこの映画で気になったことといえば、ラストだろう。アメリカ映画っぽい雰囲気で始まり、アメリカ映画っぽく終わる映画。なんとなく不完全燃焼な気持ちになったが、それはきっとドイツ人監督によるハリウッド映画への皮肉だったのだろう。映画の中にもドイツ移民の主人公が『I love America』と言う台詞がある。戦争には一度も参加したいと思った事がなかった主人公。ただ飛ぶことが夢だった彼の『I love America』にはヴェルナー・ヘルツォーク氏のアメリカ映画に対する皮肉がこもっていた。

岡本太陽

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