PUSH 光と闇の能力者 - 渡まち子

◆最終的には“風が吹けば桶屋が儲かる”的なオチなのが苦笑(55点)

 別々の能力を持つ超能力者が戦ったらどうなるか。これはそんな異業種格闘技のような味わいのアクション映画だ。最強の超能力軍隊を作るため、謎の政府機関「ディヴィジョン」が暗躍する中、ニックは念動力を隠して香港に潜伏していた。そこに予知能力を持った少女キャシーが現われ、組織から逃げた女を一緒に捜してほしいと訴える。その女は大金の入ったケースと重大な秘密を握っているのだが、ディヴィジョンも彼女を狙っていた。

 同じ超能力者でも、組織で戦う政府機関と違い、隠れるように生きる個人は、自分の力を堂々とは使えない。光と闇という単純な副題とは異なる事情が戦いを複雑にするが、超能力の優劣を考えると、戦術に疑問が漂う。念力で物を動かすムーブ、物体の姿を隠すシャドウ、声の超音波で人や物を破壊するブリードなど、超能力のヴァリエーションが豊富で楽しいが、パワーの個人差があるとはいえ、予知能力は、他の能力に比べるとかなり優位だ。さらに、タイトルにもなっている、別の記憶を植えつけるプッシュをはじめとする記憶を操作するいくつかの能力は強力で、それを持つ者の勝利は最初から決まっているようなもの。ややこしく危険な手順を踏み、犠牲者を出さずとも、話はつくんじゃあるまいか。同じように超能力者同士が闘う話では「X-MEN」が思い浮かぶが、本作は時代も現代で、派手なSF要素はなく、見た目も普通。実際に米政府も研究していたという超能力者の存在を信じたくなる。最終的には“風が吹けば桶屋が儲かる”的なオチなのが苦笑だが、終わってみれば無駄な闘いも、目的のためには必要なプロセスだということなのだろう。香港の狭く猥雑な空間を使って繰り広げられるバトルの映像が、スタイリッシュで面白い。ヒューマン・ドラマで実力を発揮する天才子役ダコタ・ファニングが、荒唐無稽な物語の中でもしっかりと演技力を見せるのがさすがだ。

渡まち子

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