PUSH 光と闇の能力者 - 前田有一

◆新鮮なのか失敗なのか(30点)

 近代史の裏には超能力者たちの存在と暗躍があった、というアイデアは真新しいものではないが、『PUSH 光と闇の能力者』での取り扱いは、なかなか新鮮なものがあった。

 第二次世界大戦の頃より国家で育成され、重要な事件にかかわって来た特殊能力者たちがいた。彼らは今でもそれぞれの社会で、身を隠しつつ生きていた。その一人でムーバー(念動力を持つ者)のニック(クリス・エヴァンス)は、ある日ウォッチャー(予知能力を持つ者)のキャシー(ダコタ・ファニング)に、キラ(カミーラ・ベル)という名の女性探しを頼まれる。キラは重要な能力を持つため、組織から追われているらしい。

 香港ロケ中心に隠しカメラなど多用したゲリラ撮影、手持ちカメラの覗き見風映像や、気だるいムードの劇伴音楽など、かなり風変わりなSFアクション。

 アジアの市場的とでもいおうか、雑多で埃っぽい風景と、洗練されたVFXで味付けした超能力アクション、そして有名ハリウッド俳優の顔。あまり食い合わせのいい組み合わせとはいえないし、不具合を起こしているような気もするが、他ではあまり見られないという意味では新鮮である。

 主人公は頼りなく、強い情念を秘めているようにも、長年パワーを磨いてきた様子も見えない。よってこれをヒーローに仕立てるために、物語上、相当無理をすることに。予知能力者が、わざわざ未来を絵に描いて回りくどいアドバイスをする理由も、説明はされるが説得力はあまり感じられない。全体的にご都合主義のごまかしが下手な脚本だ。きっとしょうじき者の善人が書いたに違いない。

 超能力はX-MENのように各キャラ固有ではなく、数種類の定番能力に全員がジャンル分けされるという設定。ただし、同じ予知能力者の中にも強い弱いがあるよという世界観だ。

 ウォッチ(予知)やムーブ(念力)はともかく、スニフやシャドウやスティッチやプッシュなど、いったいどんな能力で誰がそれを持っているかなど、かなりわかりにくい。それぞれの対戦場面は、特殊効果の見せ方に工夫が見られ面白いだけに惜しい。

 名子役ダコタ・ファニングはずいぶん綺麗になったし、感情の爆発的発露をやらせたら相変わらず超一流で、女優として衰えを知らない。どこかコンセプトを間違えたような作品ではあるが、そこだけが救いか。

前田有一

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