NINE - 小梶勝男

◆フェリーニの「8 1/2」のミュージカル版の映画化だが、全く別物と考えた方がいい。大物女優たちの「隠し芸大会」としては楽しめる(70点)

 冒頭、主人公の映画監督グイド(ダニエル・デイ=ルイス)が撮影所で幻想を見る場面で、もう心を打たれてしまった。ニコール・キッドマンをはじめ、大物女優たちが次々と登場し、最後はイタリアの顔、ソフィア・ローレンである。老いてなお毅然とした(そして胸も大きい)ローレンを見ることが出来ただけで、本作の価値はあると思った。

 フェデリコ・フェリーニの「8 1/2」のミュージカル版の映画化ではあるが、あの名作とは全く別物と考えた方がいい。ハリウッドの有名女優たちの、豪華絢爛な「隠し芸大会」と思えば、結構楽しめるだろう。キッドマン、ローレンのほか、超セクシーダンスを披露するペネロペ・クルス、ジャーナリスト役が妙に魅惑的なケイト・ハドソン、「パブリック・エネミーズ」(2009)の演技が記憶に新しいマリオン・コティヤール、娼婦役が生々しいファーギー、まだまだ声が出てるなあと感心する「007」のジュデイ・デンチなど、超豪華メンバーがそろって、惜しげもなく(当たり前か)、歌とダンスを見せてくれるのである。

 ただそれだけと言えば、それだけなのだが、それ以上を求めても、本作には何もない。確かに肝心の楽曲も印象に残るものが少なく、ダンスの振り付けも革新的ではない。だが、隠し芸大会なのだから、十分ではないか。女優たちがこれほど歌って踊れるのにはやっぱり驚く。ダニエル・デイ=ルイスの場面をすべてカットして編集すれば、純粋な隠し芸大会ミュージカルが出来て、もっと良かったかも知れない。本作の場合、映画監督の苦悩は、歌とダンスをつなぐ接着剤に過ぎないのだから。

 その程度の作品ではあるが、女優たちが踊り出す度にわくわくして、その美貌や肉体美を見ているだけでウットリさせられた。若さや美しさだけではない貫禄もあって、さすがだなあ、と思った。イタリアの風景も素晴らしい。

 とにかく、女優たちをじっくり見るには、やはり劇場の大画面がいい。料金分くらいは、十分に楽しませてくれる。

小梶勝男

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