家族で見れる娯楽映画としてパーフェクト(90点)
ディズニーランドの人気アトラクションを元に映画化した作品。元のアトラクションがいわゆるホラーハウス、お化け屋敷に属する類の乗り物なので、私も最初、この映画も単なるお気楽ホラーなのかなと思っていた。しかし、実際のところはなかなかの力作、本格的な娯楽映画であった。
わずか88分間の上映時間のほとんどは、まさにアトラクションのように楽しいスペクタクルの連続。画面に迫りくるゴーストに対し、子供は素直に泣き叫び、大人は年甲斐もなくビックリしてしまう自分に苦笑しながら楽しめる。このゴーストたち、幽霊の癖にそれぞれ妙に人間味があって憎めない。
運悪くこの幽霊屋敷、ホーンテッド・マンションに閉じ込められてしまうエディ・マーフィ一家は、それぞれ離れ離れになったりくっついたりしながら、数々の試練でその家族愛を試される。彼お得意のコミカルな演技が作風にぴったりで、コメディとしてもよくできている。
最大の見所はラストシーン、これには驚かされる。意外なことに、試写会場のあちこちですすり泣きが聞こえたほどの感動場面が用意されている。これは、比較的すれた観客が多いマスコミ試写においては異常事態に近い。よもやディズニーの子供向けホラーでこんな光景が見られるとは。
『ホーンテッド・マンション』は、お客さんがディズニーランドに求める娯楽性のすべてを兼ね備えた映画。ディズニーランドを好きな人たち、つまり一般的なファミリーやカップルならば誰しも、期待以上の満足感を得られるであろう。
『映画は楽しくなくちゃだめ。最後に泣けるならなお良い』と考えている人々に、私はこの映画を強くおすすめする。今年のゴールデンウィークのエンターテイメント作品では抜きん出た完成度。きっとこの上映館の前では、鑑賞後に満面の笑顔で出てくる幸せそうな家族の姿が、たくさん見られるに違いない。
(前田有一)