◆メキシコを舞台に(55点)
ワールドカップ南ア大会も近いし、ここらでサッカー映画でも。──というわけで(もないだろうが)登場したのが『ルドandクルシ』。ノー天気な明るさに満ちたこのハートフルコメディは、しかしメキシコ映画界の誇る才能たちが本気で作った入魂の一本。
◆メキシコを舞台に(55点)
ワールドカップ南ア大会も近いし、ここらでサッカー映画でも。──というわけで(もないだろうが)登場したのが『ルドandクルシ』。ノー天気な明るさに満ちたこのハートフルコメディは、しかしメキシコ映画界の誇る才能たちが本気で作った入魂の一本。
◆年齢を感じさせないほど生き生きと元気な作品に仕上がった壮年ラブコメディ(65点)
人気ベーカリーを経営するジェーン(メリル・ストリープ)は、10年前に弁護士のジェイク(アレック・ボールドウィン)と離婚。女手一つで子供3人を育て上げた。ある春、ニューヨークのホテルのバーでジェーンが飲んでいると、そこに偶然ジェイクが現れ、ふたりは久しぶりにディナーを楽しむ。酔うがままに盛り上がったふたりは、こともあろうか一緒の部屋へ……。
◆ほとんど孫と祖母くらいの年齢差の三田佳子が生田斗真に後ろから迫る図はあまりに異様で、見ているこっちが怖くなった(50点)
太宰治の自伝的小説の映画化で、主人公を取り巻く女優たちが豪華だ。青森有数の資産家の息子の大庭葉蔵は、人間というものが判らない感覚に苛まされていた。幼い頃はわざと道化を演じ、大人になって上京してからは、画塾の友人で遊び人の堀木らと酒や女に溺れる放蕩の日々を送る。挙句の果てに生きることに疲れ、精神的に追いつめられた葉蔵は、カフェの女給・常子と心中するが、自分だけ生き残ってしまう…。
◆真犯人を追求して無実を証明するというありがちなサスペンスドラマではない(80点)
フレッド・カヴァイエの長編監督デビュー作で主演は、フランスの人気役者ヴァンサン・ランドンと『イングロリアス・バスターズ』(09)でドイツ人女優役を好演したことが記憶に新しいダイアン・クルーガー。
◆途方もない労力が必要なこのコマ撮りアニメは、手作りならではの独特の味がある(60点)
ストップモーションアニメと3Dの組合せが個性的なダーク・ファンタジー・アニメーション。家族で引っ越してきたばかりの少女コララインは、忙しい両親にかまってもらえず、まだ友だちもいない。退屈していたある日、家の中に小さな秘密の扉をみつけ中に入る。現実とそっくりだけどずっと楽しいもうひとつの世界が広がるそこは、何でも願いが叶う上に、パパもママも優しい。ただ奇妙なことに両親の目がボタンになっていた。扉の向こうの世界から戻ってみると、両親の姿がない。コララインは、ママたちを取り戻そうと決心するが…。
◆有り余る時間を消費している典型的なフリーター男は、何をやっても中途半端なのに言い訳だけは達者。ジコチューで行き当たりばったりな彼の行動には人間の弱さと愚かさと優しさが凝縮されていて、奇妙なおかしさと共感を呼ぶ。(60点)
だらしなく散らかった部屋で痴話げんかを始める男と女。その言葉には知性や教養のみならず、覇気もまったくない。ただ有り余る時間を消費している典型的なフリーターカップルだ。男は一応バンドでプロを目指しているがそれは世間体にすぎず、女はそんな男に振り回されている。何をやっても中途半端なのに言い訳だけは達者な若者のあまりにもジコチューで行き当たりばったりな行動、そこには人間の弱さと愚かさと優しさが凝縮されていて、まったりとした語り口は奇妙なおかしさと共感を呼ぶ。
◆戦勝国の軍人は敗戦国の民間人に対し、文化や芸術に対する憧憬と尊敬を言葉にし、愛にも似た情熱で相互理解を訴える。モノクロのコントラストに登場人物の感情を鮮明に反映させ、人間の誇りと良心について深い洞察を加える。(60点)
戦勝国の軍人と敗戦国の民間人。軍人は戦争に勝った事実など微塵も鼻に掛けず誠意を持って民間人に接するが、民間人は軍人に心を開かず負けても誇りまでは捨てていないことを体現する。相手国の文化や芸術に対する憧憬と尊敬を言葉にし、両国の長所を融合させるのが新たな進歩のステップであると考える軍人は、愛にも似た情熱で相互理解を訴える。最初は彼を意識的に無視し、憎しみすら抱いていた民間人は、やがて彼の話に耳を貸すようになっていく。映画はモノクロのコントラストに登場人物の感情を繊細に反映させ、人間の良心について深い洞察を加えていく。
◆都市生活に巣食うモラトリアムという透明の闇。若手実力派俳優5人のキャスティングが絶妙だ。(70点)
都内のマンションでルームシェアする、直輝、未来、琴美、良介。彼らは色恋抜きの関係を保ち、怠惰で平和な毎日を送っていた。そこに男娼のサトルが加わり小さな変化が起こる。一方、街では連続暴行事件が発生していて…。
◆俳優・渡部篤郎の長編初監督作。ワンテイク、NGなしで撮影した、ドキュメンタリーでも、劇映画でもない物語(83点)
俳優たちは普段から、映画にはワンテイクしか必要ないと思っているのかも知れない。俳優が監督すると、ワンテイクで撮りたがるように思う。俳優ヤン・イクチュンが製作・監督・脚本・編集・主演を務めた韓国映画「息もできない」(2008)は、打ち合わせ、リハーサルなしのワンテイク。クリント・イーストウッドもほとんどワンテイクで撮ると聞く。そして本作も、俳優・渡部篤郎が原案・監督・出演を務め、ワンテイク、NGなしで撮影された。
◆ベテラン俳優3人の絶妙な化学反応が、熟年男女の恋の騒動を青春映画のように輝かせる(60点)
大人の恋愛模様をコミカルな艶笑話風に描くハートフル・ストーリー。ジェーンは大人気ベーカリーを経営する実業家。10年前に離婚したが3人の子供を育て上げ、友人にも恵まれて、充実したシングルライフを送っている。だが心が満たされないと感じることも。そんな時、息子の卒業式に出席するため滞在したホテルで偶然別れた夫ジェイクと再会し、勢いでベッドイン。元サヤを望むジェイクはそれ以来、彼女に猛烈にアタックする。一方で、バツイチの建築家アダムもまた控えめにジェーンにアプローチ。元夫との再会と新しい男性との出会いの両方にときめくジェーン。微妙な三角関係は、思いがけない出来事に発展していくが…。
◆ナンシー・マイヤーズ脚本・監督・プロデュースのコメディー。下ネタ満載で下品だが楽しい(66点)
かつてイタリアに「艶笑喜劇」というジャンルがあった。本作はアメリカ映画だがその系列だろう。一見、感動作のように見えるが、かなり下品な下ネタのコメディーだ。名優メリル・ストリープがこういう役をやるのは、ロビン・ウィリアムスが変態の悪役をやるようなものなのだろうか。
◆太宰治の著名な原作を、「赤目四十八瀧心中未遂」(2003)の荒戸源次郎が監督、ジャニーズJr.の生田斗真が主演した話題作。鈴木清順風の映像は悪くないが、原作の表面をなぞって、その奥まで届かなかった印象だ(66点)
「人間失格」を映画化するのは、大変難しいと思う。個人的には、太宰治の本質は文体にあると思っている。「何が書かれているか」よりも、「どう書かれているか」の方に魅力があるのではないか。その文体をどのように「映画」として視覚化するのか。私には想像がつかない。もちろん、映画はいつも、私の貧弱な想像など軽々と超えてゆく。今回もそれを期待したのだが、残念ながら、そうはならなかった。
◆バレンタインデーに胸をときめかせ、その日だけは愛する人に自分の思いを伝えるためにテンションを上げる人々を散文的にスケッチする。しかし、各々のエピソードに共感できるディテールがまったくなく、リアリティに欠けている。(30点)
プロポーズに舞いあがる若者、不倫に振り回される女、初体験を済ませたい高校生、先生に心奪われる小学生、大切な人に会いに行く兵士、年輪を重ねた老夫婦 etc.。バレンタインデーという特別な一日に胸をときめかせ、その日だけは愛する人に自分の思いを伝えるためにテンションを上げる人々を散文的にスケッチする。しかし、各々のエピソードには共感できるディテールがまったくなく、ただ脚本家が頭の中で考えたような稚拙なシチュエーションは恐ろしくリアリティに欠けている。さらにコメディとしての作り込みも甘く、空回りする映像の連続に強烈な退屈と闘わなければならなかった。