GREENBERG - 岡本太陽

◆シリアスかつコミカル、本作でも映画監督ノア・バームバックの才能が光る(85点)

 『イカとクジラ』や『マーゴット・ウェディング』で知られる映画監督ノア・バームバックの新作『GREENBERG』の主人公は無職の40歳、ロジャー・グリーンバーグ(ベン・スティラー)。ニューヨークの生活の中で精神的に疲れ果て病院に入院していた彼は、15年の後に出身地ロサンゼルスに戻り、とりあえずは職は探さず、しばらく休暇で家族とベトナムに行く弟フィリップ(クリス・メッシーナ)の豪邸の留守番役を受け持つ事にする。家の玄関のドアを修理したり、マメに苦情の手紙を書いたり、犬の世話をしたりしながら、旧友アイヴァン(リス・エヴァンス)やフィリップのパーソナル・アシスタントであるフローレンス(グレタ・ガーウィグ)らに会い、一度は去った土地に再び繋がりが芽生える。

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シャッター アイランド - 山口拓朗

シャッター アイランド

© 2009 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

◆謎解きのプロットや結末に新味はないものの、「トラウマ」という人間心理を利用したミステリアスなストーリー展開と、スコセッシらしい力強い演出力が功を奏し、作品自体は手堅くまとまっている(75点)

 「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002年)「アビエイター」(2004年)「ディパーテッド」(2006年)で3度コンビを組んだマーティン・スコセッシ監督×レオナルド・ディカプリオが、4度目のコンビ作品「シャッター アイランド」を完成させた。ふたりが挑んだのは「精神障害×犯罪者×孤島」をキーワードにしたサスペンス&ミステリー。「ミスティック・リバー」原作者デニス・ルヘインのミステリー小説を映画化したものだ。

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フェーズ6 - 佐々木貴之

フェーズ6

© MMVIII by PARAMOUNT VANTAGE, A Division of PARAMOUNT PICTURES CORPORATION All Rights Reserved.

◆もう少しホラー、スリラー作品ならではの恐怖やショッキングな描写を用意していたらもっと面白く仕上がっていただろう(60点)

 スペインのアレックスとダビのパストール兄弟の長編映画デビュー作となるサスペンス・スリラー。

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のだめカンタービレ 最終楽章 後編 - 渡まち子

のだめカンタービレ 最終楽章 後編

© 2010フジテレビ・講談社・アミューズ・東宝・FNS27社

◆ついに実現した二人の“共演”は、グランドフィナーレにはあまりにも地味すぎやしないか(30点)

 のだめと千秋の恋の結末が気になるグランドフィナーレの後編だが、見終わってみると、わざわざ2部構成にする意味があったのだろうか?? と大いに疑問だ。音楽に集中するため、互いに距離を置こうと離れ離れに暮らすことになったのだめと千秋。孫Ruiと共演し大成功を収める千秋とは対照的に、のだめはコンクールへの参加さえ許してもらえず焦る日々だ。千秋との恋愛にも限界を感じ、失意ののだめに、シュトレーゼマンが共演話を持ちかける…。

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不思議の国のアリス(1903年版) - 小梶勝男

alice1903

◆ルイス・キャロルの原作を初めて映画化した8分の短編(80点)

 昨年、WHDジャパンからDVD「不思議の国のアリス1903―1915」が発売されたのは、「アリス」ファンにとってはうれしい驚きだった。「アリス」の世界初の映像化である1903年版と、原作の挿絵を描いたジョン・テニエルの世界を忠実に映像化したとされながら、日本未公開で長らく幻の作品とされていた1915年版の2本が収録された、実に魅力的なDVDだった。両作は、ティム・バートンの3D映画「アリス・イン・ワンダーランド」の原点ともいえる。バートン版と併せて見ると大変に興味深い。

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クロッシング - 渡まち子

クロッシング

© 2008 Big House / Vantage Holdings. All Rights Reserved.

◆あくまでも主人公とその家族の思いに視点を置いて描くことで、彼らの運命が結果として北朝鮮の実態を強く浮き彫りにする(70点)

 脱北のリアルな実態を描いて、悲痛な感動を呼ぶ秀作だ。北朝鮮の小さな村で家族と幸せに暮らすヨンスは、病弱な妻のため薬を手に入れようと、命懸けで国境を越えて中国に出稼ぎに行く。懸命に働くが、不法労働と脱北の罪が重なり、不本意な状況で韓国に亡命することに。だが、その間に妻は亡くなってしまう。孤児になった11歳の息子ジュニは、父を探してあてのない旅に出るが、国境の川で捕まり強制収容所に入れられてしまう…。

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ジョニー・マッド・ドッグ - 福本次郎

ジョニー・マッド・ドッグ

© 2008 - MNP ENTREPRISE - EXPLICIT FILMS

◆あどけなさの残る顔なのに目に宿るのは怒りと憎悪。民間人を殺す過程で、仲間に見くびられないように虚勢を張りより凶暴になっていく少年兵たちの姿が悲しい。映画は、ひとりの少年兵を通じてリベリア内戦の現実を告発する。(60点)

 あどけなさの残る顔なのに目に宿るのは怒りと憎悪。筋肉のついていない華奢な体にもかかわらず、自動小銃の扱いと交戦時の身のこなしは一人前の軍人。投降した民間人を殺す過程で、仲間に見くびられないように虚勢を張りより凶暴になっていく少年たちの姿が悲しい。彼らは消耗品でしかないのを理解しているのか、そのうっ憤を晴らすために引き金を引いている。それは、自分たちをこんな境遇に追いやった運命への復讐、映画は、ひとりの少年兵を通じてリベリア内戦をリアルに告発する。

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スナイパー: - 福本次郎

スナイパー:

© 2009 Media Asia Films(BVD)Ltd.All Rights Reserved

◆射撃は一番ながら独断専行の男と警察の狙撃部隊の暗闘を通じて、銃と共にしか生きられない男たちの熱い思いを描く。闘争心、怒り、友情、後悔、報復といった感情が複雑に絡み合い、飛び交う銃弾がその気持ちを昇華していく。(60点)

 風を読み、重力を計算に入れ、湿度を考慮して照準を合わせる。呼吸を整え心臓の鼓動を抑え、ターゲットの動きが止まるまで何時間も姿勢を変えずに引き金を引く瞬間を待つ。スナイパーに必要な資質は冷静さと集中を持続させる強靭な精神力とチームとして行動する際の協調性。物語は、射撃は一番ながら独断専行の男と、警察の狙撃部隊の暗闘を通じて、銃と共にしか生きられない男たちの熱い思いを描く。そこにあるのは暑苦しいまでの男臭さ。闘争心、怒り、友情、後悔、報復といった感情が複雑に絡み合い、飛び交う銃弾がその気持ちを昇華していく。

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レギオン - 小梶勝男

レギオン

◆「キリシタン・アクション」認定第2弾(第1弾は「ザ・ウォーカー」)。天使の軍団と人類との戦いを描いているが、スケールは実に小さい(66点)

 キリスト教は文化として全世界に広がっている。キリスト教的な世界観をバックグラウンドとしない映画を探す方が難しいだろう。しかし、キリスト教そのものをテーマとしたアクション映画は、それほど多くないと思う。本作や「ザ・ウォーカー」(2010)を見て、「キリシタン・アクション」というジャンル名を提唱したくなった。なぜ「クリスチャン・アクション」ではないのかというと、普通の日本人には納得しがたいテーマを扱っている「違和感」を、江戸時代のキリスト教という「異質なもの」の呼び方で表現したかったのだ。

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アリス・イン・ワンダーランド - 小梶勝男

◆ティム・バートンが3Dで描く「不思議の国のアリス」の後日譚。独特の映像世界はさすがだが、ロールプレイングゲームのような話が理に落ちすぎている(78点)

 試写に行きそびれ、近くのシネコンで見た。日本語吹き替え版、3D吹き替え版、3D字幕版の3パターンが上映されていたが、字幕版はちょうどお昼とか、遅い回とか、鑑賞しにくい時間帯だけ。専ら子供向けの作品というわけではないのに、メーンは吹き替えだった。「シャッターアイランド」がきっかけで、吹き替えの時代が本格的にやってくると言われているが、3D作品に限って言えば、すでに上映は吹き替えが中心になってしまったようだ。

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オーケストラ! - 渡まち子

オーケストラ!

© 2009 - Les Productions du Trésor

◆アンドレイがなぜフランスの売れっ子女性バイオリニストと共演したがるのか。歴史の悲劇であるその理由が、クライマックスの演奏会と共に語られる場面がすばらしく感動的だ(70点)

 落ちぶれた元楽団員のリベンジの物語は、笑いと涙の感動作だ。かつて一流オーケストラ・ボリショイ交響楽団の天才指揮者だったアンドレイは、ある事件が原因でキャリアの絶頂期に職を追われ、今はやむなく清掃員として劇場で働いていた。ある日、出演できなくなったオーケストラの代わりを探しているというFAXを入手。アンドレイは、かつての仲間たちを集めてニセの楽団を結成し、生涯の夢だったパリ公演を実現するという無謀な計画を思いつく。ソリストとして指名したのは、パリ在住のヴァイオリニストのアンヌ・マリーだ。アンドレイには、再び音楽で輝きたいという望みとは別に、ある思惑があったのだが…。

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ウルフマン - 佐々木貴之

ウルフマン

© 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

◆足が大きくなり、毛むくじゃらになり、顔が狼化するシーンに観る者は釘付けになること間違いなし(75点)

 狼男を題材にした作品が21世紀に甦った!! 監督はジョー・ジョンストン、狼男=ウルフマンに変身する主人公をベニチオ・デル・トロが演じる。

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17歳の肖像 - 渡まち子

17歳の肖像

◆原題は「教育」というのだが、ヒロインがひとつの恋を通して、人生を学んでいくストーリーはまさしく体験学習(70点)

 17歳の少女の危うさと、痛みを乗り越えるしなやかさがまぶしい英国映画の佳作。1961年、ロンドン郊外で暮らす成績優秀なジェニーは、両親の期待を背負って名門オックスフォード大学を目指していた。平凡で退屈な彼女の毎日を一変させたのが、偶然出会った年上の男性デイヴィッド。彼が教えてくれたのは、音楽会や旅行、ギャンブルなどの新鮮で刺激的な世界だった。上流階級の友人にも紹介されて大人の世界へと足を踏み入れるジェニーだったが、彼女はまだデイヴィッドの重大な秘密を知らなかった…。

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17歳の肖像 - 福本次郎

17歳の肖像

◆音楽会、オークション、パリ。映画は少女の若さゆえの全能感と繊細な感情をきめ細かく描き、人生は夢と憧れで生きていけるほど甘くないことを学ばせる。ファッションや自動車といったディテールが60年代の雰囲気を再現する。(70点)

 成績は優秀、好奇心は旺盛で、物事を理解する頭の回転も早い。少女からみると、日常に埋もれた毎日を過ごしている大人たちは平凡そのもの。安定した生活を手に入れるための努力を評価せず、刹那的な刺激が幸福であると勘違いする。音楽会、オークション、パリ、ギャンブル。彼女は、眼の前に用意された華やかな世界が労せず手に入り、永遠に続くものと思いこむ。映画はヒロインの若さゆえの全能感と繊細な感情のゆらぎをきめ細かく描写し、夢と憧れで生きていけるほど甘くないことを学ばせる。ファッションから自動車、街並みといったディテールが60年代初頭の雰囲気を活き活きと再現している。

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獄(ひとや)に咲く花 - 福本次郎

獄(ひとや)に咲く花

© 2010『獄に咲く花』製作委員会

◆獄中なのに句会や書道教室が開かれ、独房の行き来も家族の面会も自由、現代の刑務所と比較しても格段に人道的な獄内が新鮮だった。映画は若き革命家の先進的な思想に触れた女囚の目を通して、命がけで信念を貫く勇気を描く。(40点)

 獄中なのに句会や書道教室が開かれ、独房の行き来も家族の面会も自由、食事もきちんと支給されて懲役もない。ただ狭い敷地内から出られないだけの、いわば軟禁状態という獄のおおらかさに驚かされる。いくら身元がしっかりとした士分の囚人で逃亡の恐れがないとはいえ、牢獄の悲惨さは微塵もなく、囚人たちは時間を持て余している。現代の刑務所と照らし合わせても格段に人道的な処遇で、これぞ武士の特権とも思える獄内の描写が新鮮だった。映画は若き革命家の明るく先進的な思想に触れた女囚が再び生きる希望を見出していく過程で、命がけで信念を貫く勇気を描く。

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