◆ニュージーランド、エジプト、日本の自然と世界遺産を、地球観測衛星からの映像と、4K3Dデジタルカメラによる映像で描いた立体映画。38分の短編だが、3D本来の魅力が存分に味わえる(71点)
日本における「3D元年」といわれた昨年から今年にかけて、デジタル3D作品が次々と公開されている。アニメーションやモーション・キャプチャーについては、立体効果に満足した作品が多かったが、実写となるとどうか。モーション・キャプチャーと実写が融合した「アバター」は別として、「アリス・イン・ワンダーランド」は妙に画面が暗く、「タイタンの戦い」は殆ど飛び出す感じがなかった。実写の3Dは果たして成功しているといえるだろうか。
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© NTV
◆沈滞する地方都市に美少女たちが喝!(70点)
地方在住の女子高生が得意の書道で町おこしに一役買った実話を映画化。部室での衝突や友情といった普遍的な題材に、活力を失いゆく地方都市という今日的なテーマを織りこみ、瑞々しい作品に仕立てている。四国中央高校で書道部長を務める里子(成海璃子)は、新任顧問の池澤が衆人環視の中、音楽に合わせて巨大な半紙に字を書いたのを見て、「邪道だ」とショックを受ける。だが文房具屋の娘の清美(高畑充希)は、廃業を決めた父親のために商店街でそのパフォーマンスを披露しようと決意。里子らも成り行きで協力するのだが……。
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© 2010「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」製作委員会
◆おバカなバトルが深夜TVのノリそのままに展開する様は脱力必至だ(45点)
「TRICK」10周年記念の劇場版第三弾は、豪華ゲストによる超能力者が大集合して競い合うサバイバル・コミカル・ムービーだ。霊能力者“カミハエーリ”が代々統治する万練(マンネリ)村で、掟に従い後継者を決めるバトルロイヤルが開かれることに。大会に参加し、大金をせしめようと目論む貧乏な奇術師・山田奈緒子だったが、村の青年・翔平から、バカげた風習を止めさせてほしいと頼まれ、しぶしぶ村にやってきた物理学者の上田次郎とはちあわせてしまう。そんな中、カミハエーリを目指す、霊能力者による生死を賭けたバトルが始まった…。
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◆世の中にファックユーと言いたい大人の男達の為の応援歌(70点)
40代の迷える3人の男達を主人公としたスティーヴ・ピンク長編初監督映画『HOT TUB TIME MACHINE』。まだマイケル・ジャクソンの顔の色が黒かった時、彼らは人生最高の日々を送っていたが、その時想い描いた未来予想図とはまるで違う現実に打ちのめされ現在人生座礁中。モトリー・クルーの「ホーム・スイート・ホーム」を始めとする、全編80年代のヒットソングで飾られる本作はとことん馬鹿で楽しく、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』を彷彿とさせる、男たちが日常を忘れハメを外そうとするコメディ。しかし、本作がタダのお馬鹿映画ではないのは、悲しい悲しい要素が底辺に広がっているから。
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© 2009 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
◆前半には哲学的なムードが漂うのだが、後半は迫力のアクション・ムービーに(65点)
独特の味わいの異色アニメーションの映像は、アメリカ映画というより東欧のそれを思わせる。古い研究室で一体の人形が目を覚ます。麻で出来た身体、腹部には大きなジッパー、背中には数字の“9”の文字。状況が分からないまま外に出ると、街は見渡す限りの廃墟と化していた。世界は終わってしまっているのか?! そんな9の前に2の背番号の人形が現われ自分たちは仲間だと告げるが、突如現われた巨大な機械のモンスターに襲われてしまう…。
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◆大人になると汚れてしまうと思いこむ少女にとって、意のままにならない人生など生きるに値しない。彼女が、人を愛し愛される、人を信じ信じられるのが、「ほんとうの幸」につながることを知る過程がみずみずしい感性で描かれる。(60点)
ずっと純粋な気持ちのままでいたい、自分の醜い部分が許せない、そんな思春期特有の繊細な心理が宮沢賢治の作品のモチーフに投影され、「死」という言葉が持つ甘美な響きに強く惹かれていく様子がリアルに再現される。大人になると自らが汚れてしまうと思いこんでいる少女にとって、意のままにならない人生など生きるに値しない。彼女が、人を愛し人に愛される、人を信じ人に信じられるのが、「ほんとうの幸」につながることを知る過程がみずみずしい感性で描かれる。オタク系フィギュアのような登場人物の大きな目と細長い胴体・手足が最初はとっつきにくかったが、“文学少女”のイメージにはぴったりだ。
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© 2010「ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-」製作委員会
◆堕落の果てにある快感を体現するような仲里依紗の弾けぶりに圧倒される。悪を象徴するにふさわしい洗練された様式美に統一され、熱狂と息苦しさを見事に表現するゼブラクィーンが熱唱するシーンだけでも一見の価値がある。(50点)
スプレーしたシャドウで射るようなまなざしを強調し、漆黒のボンテージ衣装を身にまとって挑発するように腰をくねらせる。マイクを握ったヒロインの邪悪を超えた冷酷さと淫靡を伴った艶めかしい美しさがMTV調の映像に炸裂する。堕落の果てにある快感を体現する仲里依紗の弾けぶりが見る者を圧倒する。モノトーンのステージは、悪を象徴するにふさわしい洗練された様式美に統一され、映画の持つ熱狂と息苦しさという独特の雰囲気を見事に表現する。このゼブラクィーンが歌うシーンだけでも一見の価値があった。
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© 空知英秋/劇場版銀魂製作委員会
◆原作やTVアニメのファン以外の“いちげんさんお断り”と冒頭で宣言されてしまうのだが、まさに何の予備知識もない者はお手上げ状態。ただ、劇場版と銘打つのならば、せめて目を見張るような映像だけでも見せてほしかった。(30点)
原作やTVアニメのファン以外の“いちげんさんお断り”と映画の冒頭で宣言されてしまうのだが、まさに何の予備知識もない者はお手上げ状態になる。妙に真剣なバトルシーンの間に突然はさみこまれるぬるいギャグ、楽屋裏話で盛り上がっている登場人物、そして悪ふざけとしか思えない次回予告など、無料で視聴できるTVならば「実験的」として見る者も喜ぶだろうが、わざわざ映画館に足を運んでお金を払って見に来る観客に見せる代物ではあるまい。はたして映像のクオリティも低く、これが日本製アニメかと思うほど。劇場版と銘打つのならば、せめて目を見張るような映像だけでも見せてほしかった。
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© Filmes do Tejo II - Les Films de l'Après-Midi. 2007.
◆若くして移民となった主人公が生涯をかけて祖国の復興を夢に見るが、独力でできることはたかが知れている。コロンブスがポルトガル人だったという仮説を立証しようとする医師の姿を通して、常識を疑うのが革新への道と語る。(50点)
かつて世界の富を寡占したポルトガル、いまやEUの二等国の地位に甘んじたまま栄光は取り戻すには程遠い。若くして移民となった主人公が生涯をかけて祖国の復興を夢に見るが、独力でできることはたかが知れている。せめて歴史に埋もれた事実を掘り起こし、後世に名を残した先駆者の故郷、つまりは新大陸の出発点としてもう一度注目を浴びさせようとする。そんな男の旅は正史に対する挑戦状。彼の行動を見守る国旗を纏った剣を持つ少女は、過ぎ去り日のポルトガルの象徴としてそっと物語に寄り添う。映画はコロンブスがポルトガル人だったという仮説を立証しようと奔走する医師の姿を通して、常識に異を唱えるのが革新の第一歩であることを語る。
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◆手持ちカメラを駆使した臨場感溢れるアクションシーンが秀逸(75点)
マット・デイモンとポール・グリーングラス監督が『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』に続いて三度目のタッグを組んだ戦争系サスペンス・アクション。
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◆懸命に幸福を求めてもがくノーマを演じるキャメロン・ディアスが、いつもの明るいキャクターとは違って本格的な演技をみせて素晴らしい(65点)
傑作短編を大胆に膨らませたSF不条理劇。ある朝、ノーマとアーサー夫妻の元に、赤いボタンの付いた不思議な装置が送られてくる。夕方、謎めいた男スチュワード氏がノーマを訪ね驚くべき提案を持ちかける。「このボタンを押せばあなたに100万ドル(1億円)を差し上げます。ただし世界のどこかで見知らぬ人がひとり死にますが」。期限は24時間で他言すれば取引は無効。夫妻は怪しみ、道徳的ジレンマに悩むが、結局ボタンを押してしまう…。
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© 2009 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
◆人形たちと機械獣のバトルを大きな見せ場にしており、派手なアクションシーンとして描いているのが何よりも良い(75点)
第78回アカデミー賞で短編アニメ部門にノミネートされたシェーン・アッカー監督の同名作品をティム・バートンが大いに気に入り、彼の製作で長編化された。監督は短編同様にシェーンが務めた。
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◆目新しさはないが、ひとりの少女の喜びと痛みを描いたオーセンティックな青春映画としてオススメ(75点)
「ハイ・フィデリティ」(2000年)や「アバウト・ア・ボーイ」(2002年)の原作者ニック・ホーンビィが、英国の辛口ジャーナリスト、リン・バーバーのとある回想録を脚色。監督に女流のロネ・シェルフィグ、主演に若手女優キャリー・マリガンを起用した本作「17歳の肖像」は、街並からファッションまで、1960年代の空気感をたっぷりと漂わせたイギリスを舞台に、大人の世界へと足を踏み入れる17歳目前の少女の成長と挫折を描いた秀作。キャリー・マリガンは、メリル・ストリープらオスカー候補者を抑えて、英国アカデミー賞の主演女優賞に輝いている。
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◆ジョニー・トー監督独特の、芸術的なまでの銃撃戦を堪能できるフィルム・ノワール(83点)
ジョニー・トーが「ヴェンジェンス 報仇(原題)」を撮ると聞いて、ショウウ・ブラザースのチャン・チェ監督作のリメークかと思ったが、全く違っていた。主演はフランス人のジョニー・アリディ。香港とフランスの合作で、最初はアラン・ドロン主演のフィルム・ノワールとして準備されていたという。ドロンが脚本を気に入らず、出演を取りやめたらしい。それはそうだろう。ストーリーはよく出来ているとは言えない。脚本を読んだだけでは、本作の魅力は伝わらないだろう。なにせ、「間合い」の映画なのである。男同士が敵になるのか、味方になるのか。撃ちあうのか、撃ちあわないのか。どのタイミングで銃撃戦が始まるのか。全ては相手と向き合い、「間合い」を計ることで決まる。映画はその「間合い」をじっくりと見せる。男たちが黙って顔を見つめ合う緊張感。それが一気に凄まじい銃撃戦へと転じる瞬間のエクスタシー。脚本では絶対に分からないトー作品の醍醐味だ。
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◆大会に挑むホームレスの真剣さに打たれる(65点)
アフリカ大陸初のW杯も、もう間近。試合内容もさることながら、治安やインフラなどの諸問題を抱える南アフリカ共和国が、どれほどの大会運営を見せるのかも興味深い。その南ア、実は2006年にも1度、W杯を開いていた。……といってもホームレスだけが参加資格を持つミニサッカーの世界大会だ。『ホームレス・ワールドカップ』はその大会に参加した選手たちの、ひとときの人生を切り取ったドキュメンタリーである。
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