◆家族の喪失と再生の物語だが、そこに日本統治時代から取り残された台湾の人々の無念を組み込んだストーリーが素晴らしい(70点)
芥川龍之介の同名短編小説を下敷きにして、異国を訪れた少年の心の揺れを繊細にスケッチする佳作。8歳の敦(あつし)は、台湾人の父親の遺灰を届けるため、日本人の母・夕美子と6歳の弟の凱(とき)と3人で台湾の小さな村を訪れる。そこには日本語を話す優しいおじいちゃんが待っていた。敦が父からもらった古い写真にはトロッコと線路が写っていておじいちゃんはその場所を一緒に探してくれる。数日後、敦と凱は、森林の再生を願って働く青年と一緒に、昔、日本軍が敷いたという線路の上にあるトロッコに乗り山へ向かうが…。
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© 2010 BOX! Production Committee
◆物語はベタな青春スポ根もので、死と隣り合わせのボクシングの激しさは希薄。アマチュアボクシングという設定からくる安心感がこの物語の長所かもしれない(50点)
ボクシングを通して、まったく違うタイプの青年2人が共に成長していく姿を描く青春ストーリー。高校のアマチュアボクシング部に所属している体育科のカブは、問題児だが天才的なボクシングセンスを持っている。一方、彼の幼馴染で進学科の優等生のユウキは、弱い自分を変えたくてボクシング部に入部する。2人は共にボクシングへの熱い思いを高めていくが、やがて愚直に練習に励むユウキの潜在能力が発揮され、実力が逆転してしまう…。
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◆70年代に東映で量産されたピンキー・バイオレンスのテイストを現代に甦らせたような作風が魅力的(75点)
東亜英健(中平一史&奥田真一)のショートムービー『やくざハンター』を劇場用長編作としてパワーアップさせた『スケ番☆ハンターズ』二部作。今回は中平一史が手懸けた『総括殴り込み作戦』。
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© 2010映画『パーマネント野ばら』製作委員会
◆暴力、ギャンブル、浮気…。男に人生を振り回されながらも、小さな村でしか生きられない女たちの固い決意をパンチパーマで象徴し、どれほどひどい目に遇わされても男なしではいられない悲しい性をコミカルなオブラートに包む。(50点)
小さな漁村にあるたった一軒の美容室に集まる女たちは、男運がとても悪い。それはみな生命力にあふれ自立し、男と対等以上にカネを稼ぐから。暴力、ギャンブル、浮気、妻の尻に敷かれた夫たちは、そのはけ口を他所に求め家庭に寄り付かなくなってしまうのだ。そんなどうしようもない男たちに人生を振り回されながらも、この村でしか生きられない女たちの固い決意をきつく巻いたパンチパーマで象徴する。どれほどひどい目に遇わされても男なしではいられない彼女たちの悲しい性、しかし映画はあえてそこを強調することなく、むしろコミカルなオブラートに包む。
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◆親子のつながりすら希薄になる日本で、忙しなく働く母に育てられた幼い兄弟は、いつしか笑顔を失っていた。他人を思いやる余裕をなくした日本人母子が、台湾の人々との交流の中で疲れてざらついた心を癒していく過程を描く。(50点)
日本人になりたかった祖父、台湾で暮らしたいと言う母、そして日台双方の血を半分ずつ引いている子供たち。親子のつながりすら希薄になる日本で、忙しなく働く母に育てられた幼い兄弟は、いつしか笑顔を失っていた。父の死をきっかけに、父の故郷に母と共に渡った子供たちは、そこで味わった経験のない人間同士の絆を発見していく。映画は、他人を思いやる余裕をなくした日本人母子が、山深い台湾の小さな村で生活する人々との交流の中で、疲れてざらついた心を癒していく過程を描く。
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◆和解という道を最初から捨てている好戦的な内容は宗教もへったくれもなく、ひたすらアクション映画の道を行く(50点)
大天使ミカエルが神を裏切り、人類のために地上で壮絶な戦いを繰り広げるという、ありがたいのか迷惑なのかビミョーな宗教映画は、かなりの珍作アクション・スリラーだ。モハベ砂漠のさびれたダイナーで、客の老女が突然怪物に変身し、店は虫の大群に取り囲まれる。信じがたい現実に店主や息子、客たちは恐怖におびえるが、そこに大量の武器で武装した男が現れる。名前は“マイケル”だと告げた彼は、実は、人類を見捨てた神の命令に背き、ただ一人、人間に味方した大天使ミカエルだった。やがて恐ろしい戦いの幕が切って落とされる…。
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© 2010映画『パーマネント野ばら』製作委員会
◆自分につくささやかな嘘は、皆が共有するオープンな秘密。そんな設定が納得できる小さなコミュニティの揺るぎない優しさが心にしみる(65点)
大人の女性たちの恋模様は、可笑しくて、たくましくて、そして悲しい。夫と離婚し幼い娘を連れて出戻ったなおこは、実家で母のまさ子が営む、町でたったひとつの美容室「パーマネント野ばら」を手伝っていた。そこは近所のおばちゃんたちが毎日集まっては男との思い出や恋愛、噂話に花を咲かせるにぎやかな場所である。なおこの友人のみっちゃんやともちゃんも、浮気男や暴力男など、ダメな夫に苦労しながらも明るく生きている。一方、なおこは、高校教師のカシマと静かな恋をしているのだが、そこにはある秘密があった…。
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© 2009 BABE RUTHLESS PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved.
◆親が敷いたレールからはみ出して己の信じた道を進みたい。ふた昔前に流行ったローラーゲームを題材にとり、スピーディな試合シーンを再現。青春まっただ中のヒロインが自らの力で運命を切り開いていく姿は疾走感にあふれる。(60点)
親が敷いたレールからはみ出して己の信じた道を進みたい。ティーンエージャーなら誰しも経験する自立の瞬間。今まで知らなかった世界に触れ、その磁力に引き寄せられたヒロインが、仲間やボーイフレンドに支えられて、両親との葛藤を乗り越えていく展開はいつの時代に共通する通過儀礼だ。映画はふた昔前に流行ったローラーゲームを題材にとり、スピーディな試合シーンを再現。青春まっただ中の彼女が自らの力で運命を切り開いていく過程は疾走感にあふれている。
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◆沈んだブルーを強調したトーンはリアルよりも様式美を追求し、銃弾と血しぶきが舞うシーンは怜悧な心の痛みを感じさせる。友情よりも深い絆で結ばれた男たちの運命を共にしていく過程が、切なくも豊饒な死に昇華されていく。(60点)
一度交わした約束は必ず果たす、たとえその先に破滅が待ち構えていても。沈んだブルーを強調したトーンはリアルよりも様式を追求し、銃弾が飛び交い血しぶきが舞うシーンの数々は残酷さよりも怜悧な心の痛みを感じさせる。自分の命よりもプライドを大切にするアウトローたちの、手にした拳銃で会話するかのような“男の世界”は洗練されたスタイルを持ち、映画はひとりのフランス人の復讐劇を通じて中国人が重んじる武侠の精神を描き切る。友情よりももっと深い絆で結ばれた男たちの運命を共にしていく過程が、限りなく切なくも豊饒な死に昇華されていく。
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© 2009 BABE RUTHLESS PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved.
◆ワイルドなローラーゲームの躍動感とエンタテインメント性にビックリ!エレン・ペイジが好演だ。(70点)
テキサスの田舎町に住む17歳のブリスは、母親のために美人コンテストに出場しては落胆する自分自身に飽き飽きしていた。そんなある日、年齢も境遇もさまざまな女性たちが行なう“ローラーゲーム”に心を奪われる…。
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© 2010「孤高のメス」製作委員会
◆「命のリレー」に感涙するもよし、医学の意義を再考するもよし(60点)
現職医師・大鐘稔彦の医療小説を『フライ,ダディ,フライ』の成島出監督が映像化。1989年、腐敗した市民病院に赴任した米国帰りの外科医、当麻(堤真一)は、卓越した手技と医療への熱意によってナースや若手医師を感化していく。世話になった市長(柄本明)が肝硬変で倒れると、当麻はまだ法律で認められていなかった脳死患者からの肝臓移植を決断。しかし当麻を快く思わない外科医長の野本(生瀬勝久)は、それを追い落としの口実にしようと目論み……。
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© 2009 Brothers Production, LLC. All Rights Reserved.
◆ナタリー・ポートマンも菩薩である(70点)
スザンネ・ビア監督のデンマーク映画『ある愛の風景』(04)を、『マイ・レフト・フット』のジム・シェリダン監督がリメイク。よき夫、よき父、よき海兵隊将校である兄のサム(トビー・マグワイア)は、厄介者の弟トミー(ジェイク・ギレンホール)が出所するのと入れ替わりにアフガニスタンに出征し、乗っていたヘリを撃墜される。自堕落だったトミーは、悲しみに沈む兄嫁のグレース(ナタリー・ポートマン)と2人の姪を支える中で次第に更生していくが、彼らの間に絆が芽生え始めた頃、死んだはずのサムが別人のようになって生還し……。
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© 矢島美容室プロジェクト
◆悲しくて涙が出る! という意味ではなく・・・違う意味で感動!(40点)
こちらの映画は、“フジテレビの人気バラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」”からプロデュースされた映画なんです♪
「矢島美容室って何?!」と思われる方が多くいると思いますので、簡単にご紹介しますね♪
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© 2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA / DIRECTIONS, Inc.
◆比較的さっぱりとした絵柄は、無機質なようでいて感情を奥底に秘める、この物語のキャラクターと世界観にフィットしている(60点)
インターネットで配信された人気WEBアニメーションの劇場版は、名付けて“1st. シーズン完全版”。ロボットが実用化されて久しく、人々がアンドロイドを家電として扱うことが常識の、日本と思われる近未来。人間と変わらない外見ゆえに、必要以上にアンドロイドに入れ込む人々は“ドリ系”と呼ばれ、社会問題に。ロボット倫理委員会はそんな社会を監視していた。ある日、高校生のリクオは、自家用アンドロイドのサミィの行動記録から、不思議な喫茶店“イヴの時間”の存在を知る。親友のマサキと共に訪れたそこでは、人間とアンドロイドを区別しないという独特のルールが設けられていた…。
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© PFFパートナーズ=ぴあ、TBS、TOKYO FM、IMAGICA、エイベックス・エンタテインメント、USEN
◆演出にキレがある訳でもなく、ドラマ展開も冗長気味。汁系のユーモアに至っては完全にマニア好みだ。しかし同時に、息づかいと生命力が感じられる作品でもある(70点)
弱冠26歳の映画監督、石井裕也。「ぴあフィルムフェスティバル」のコンペティション第29回PFFで「剥き出しニッポン」がグランプリを受賞、アジアでは「第1回エドワード・ヤン記念 アジア新人監督大賞」を受賞するなど、国内外で高い評価を得ている注目の才能だ。
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