「何か気軽にホラー映画でも見たい」と娯楽目的の軽い気持ちで足を運ぶと期待はずれになるだろう。(点数 90点)
(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
アンソニー・ホプキンス主演の映画『ザ・ライト -エクソシストの真実-』がかなり良かった。
予告編はB級ホラーのテイストが滲んでいて不安半分だったが、さすがにアンソニー・ホプキンスが作品を選んでいるだけあって、
単なるホラー映画ではない、しっかりとした人間描写のある重厚なドラマを楽しめた。
「何か気軽にホラー映画でも見たい」と娯楽目的の軽い気持ちで足を運ぶと期待はずれになるだろう。(点数 90点)
(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
アンソニー・ホプキンス主演の映画『ザ・ライト -エクソシストの真実-』がかなり良かった。
予告編はB級ホラーのテイストが滲んでいて不安半分だったが、さすがにアンソニー・ホプキンスが作品を選んでいるだけあって、
単なるホラー映画ではない、しっかりとした人間描写のある重厚なドラマを楽しめた。
エーミルの葛藤が、同胞が殺し合う悲惨さ以上に強烈な印象を残す作品だった。(点数 60点)
男は殺され、女は犯されてから殺される。敵に対する容赦なき制裁、
国と国の戦争ではなく同国民同士の階級闘争においては、俘虜への情
けなど一切必要ないとばかりに、降伏した彼らに銃弾を撃ち込む。映
画はそんな状況に置かれたインテリ階層の苦悩を、1人の女捕虜の扱い
を巡って重層的に描く。あくまで理性的に振る舞おうとする准士官、
信念を曲げない女赤軍兵、そして人文主義の大家といわれた軍事裁判
所判事。愛も理想もヒューマニズムも、圧倒的な暴力の前ではうたか
たのごとき非力なものに過ぎないのだ。
圧倒的にスピーディな展開がじっくり考える暇を与えない。(点数 70点)
(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS,LLL
自分はいったい誰? 記憶のみならず、一切の身分証明をなくした男
が途方に暮れ、ヒントを探し、真実を求めてさまよう。ところが、わ
ずかによみがえった妻との思い出も否定され、あらゆる自己認識が崩
壊していく。映画は交通事故に遭った男が経験する奇妙な世界に観客
を放り込み、主人公と同じ感情を体験させる。それは今までに味わっ
たことのない不思議で不愉快な感覚。まるでパラレルワールドに迷い
込んだようなリアルな悪夢となって五感を刺激する。
利益と効率ばかり重視する現代社会で、誰からも求められない寂しさが、愛嬌のある容姿をした主人公を通して表現される。(点数 50点)
(C) 2011「豆富小僧」製作委員会
妖怪なのに人間から怖がられないばかりか、バカにされてしまう。仲
間からも非力を笑われ、父からは怒鳴られる。そんな妖怪が、いなく
なった母を探す過程で、自分にもできることを見つけていく。映画で
は、利益と効率ばかり重視する現代社会で、誰からも求められない寂
しさが、愛嬌のある容姿をした主人公を通して表現される。何かの役
に立ちたい、でも己には知恵も力もない、そう思い込んでいる彼が、
友人たちとの触れ合いの中で自らの使命に目覚めていく姿が愛おしい。
マーラーの作品は愛してもマーラー本人は愛せなかったアルマの複雑な気持ちを描くなどの工夫がほしかった。 (点数 40点)
(C) 2010, Pelemele Film, Cult Film, ARD, BR, ORF, Bioskop Film GmbH
世紀末の面影を色濃く保ち、落日の帝国の首都としてかつての繁栄の
残滓に寄り添うかのような20世紀初頭のウィーン。妻の不貞に心を痛
め、創作に行き詰まり、強迫観念に取りつかれたあげく精神科医のコ
ンサルティングを受ける作曲家の苦悩は、近代から現代への大変換に
取り残されそうになっていることに遠因があるのか。貴族趣味の象徴
であるサロンが最期の輝きを見せた時期、アーティストはいかに生き
るべきか、映画は主人公と妻の感情に密着する。
終始ヒョクチンのバツの悪さがスクリーンからにじみ出し、その場に居心地の悪そうな彼に思わず手を差し伸べたくなった。 (点数 70点)
©2008 StONEwork. All Rights Reserved.
明るいうちから酒を飲んでもロクなことはない。暇つぶしに飲み、嫌
な記憶を忘れようと飲み、感傷に浸るために飲み、勧められて断り切
れずに飲む。一方で酩酊状態のおかげで不運な出来事にあってもそれ
ほど腹も立たず、なんとなく酒のせいにすれば己を納得させられる。
主人公は結構悲惨な目に遭っているが、そのまろやかな銘酒のような
味わいを残す映像は、観客までもどこか夢見心地にさせてくれる。
臭いや皮膚感覚を伝えられない中、視覚のみでここまで不快にさせる作品を作ったクリエーターたちには脱帽するしかない。 (点数 60点)
(C) 2010Paramount Pictures All Rights Reserved.
子供のいたずらの延長から、悪趣味の極致のような事まで嬉々として
挑む男たち。時に大ケガをしながら、一歩間違えると命に危険が及び
かねないスタントに、ただ面白い映像を撮りたいがためにトライする。
そこにあるのはあくなきチャレンジ精神とサービス精神。フツーの人
ならひらめいても絶対に実行に移さないアイデアを手間暇かけて準備
し、笑いながらも痛さに耐え、真剣に取り組む姿はある種感動的だ。
下劣も究極を目指せば立派なエンタテインメントとして成立すること
をこの映画から教えられた。
どこかに観客が共感を持てるポイントをつくり、きちんとオチをつけている脚本が非常に洗練されている。(点数 70点)
(C)2011 「阪急電車」製作委員会
身近な人を気遣う、その気持ちはひと言かけてあげるだけ、話を聞い
てあげるだけ、そっと手を差し伸べてあげるだけで伝わる。物語は死
にたいほど辛くはないけれどそれぞれしこりを抱えて生きている人々
が、人と人の触れ合いに癒されていく過程を描く。上品だが驕らず、
人情豊かだが他人の領域にまでズケズケと踏み込まない、その距離感
をわきまえたバラエティに富んだキャラクターが心地よい。
「バカになること」に、初美自身が快感を覚え、やがてはそれを目指すようになっていく姿がほほえましい。(点数 40点)
(c)2011「これでいいのだ!!」製作委員会
子供の遊びに本気で熱中し、泥酔するまで酒を飲んで胸にしまった鬱
憤を解放する。本当のバカになる、それは恥ずかしいとか迷惑をかけ
るとかいった良識のブレーキを外し、素の自分をさらけ出すこと。赤
塚不二夫が紡ぎだすギャグとナンセンスの数々は、そんな欲望を刺激
し、バカになり切れない人々の代わりにキャラクターにバカをやらせ、
胸の奥に潜む真実を鋭くえぐりだす。
実は同じトラウマを負った者同士だったふたりが、最後には離れがたい気持ちに変化していく過程が優しさに満ちていた。 (点数 50点)
(C)2011「まほろ駅前多田便利軒」製作委員会
友情を感じるほど親しくはなく、赤の他人と呼ぶには近すぎる。人生
のレールからドロップアウトはしたがまだあきらめてもいない。熱く
も深くも強くもない、ただ中学の同級生だっただけの男ふたりのユル
~い日常が心地よい。人情時々ミステリーといった原作のイメージを
踏襲しつつ、時間はゆったりと流れていく。
勇気や行動力より幸運と諦めない意思が運命を左右する、そんな戦場の論理がリアルだった。(点数 50点)
(C) 2010, GOLDEN EAGLE.
肖像をかたどったケーキに顔を押し付け窒息死させたい。スターリン
の時代のソ連人ならば誰もが一度は夢に見たビジョンなのだろう。い
つ政治犯にでっち上げられるかわからない恐怖におびえながら暮らし、
収容所では重労働が待っている。確かにドイツから祖国を守った指導
者ではあるが、それは自国民の安全など顧みない焦土戦と冬将軍で勝
ちを拾ったもの。映画は、第二次大戦の東部戦線を生き抜いたソ連人
父娘の視線で再現する。そこに描かれているのは独ソ戦の悲惨な現実
というより、あまりにもくだらない原因で人が死んでいく滑稽さ。そ
の根底にあるのは圧政の上に帝国を築いた独裁者への憎しみだ。
「薬物依存症」の恐ろしさもしっかりと描いている作品、ということで精神科医の私としては、非常におすすめしたい作品です。(点数 90点)
(C)2010 RELATIVITY MEDIA. ALL RIGHTS RESERVED.
前回では、今年のアカデミー作品賞を受賞した『英国王のスピーチ』を紹介しましたが、今回紹介する『ザ・ファイター』は、助演男優賞(クリスチャン・ベール)と助演女優賞(メリッサ・レオ)。
アカデミー賞、演技部門での2冠を獲得しています。
心温まる感動的な物語の『英国王のスピーチ』とは対照的に、『ザ・ファイター』では、ヘビー級のパンチをくらったような強烈な衝撃を受けました。
若き天才ポップスターのステージライブ・記録映画 最強の3D映像に、感動・熱血 必至!(点数 75点)
(C) 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
正直、アメリカの少年スター・ドキュメンタリーだという本作の試写を観るべ
きか悩みました。彼のファン用映画ではないのかと思たからです。
ところが、どっこい!観賞は大正解!
一気に彼のファンになっている自分が居ました。
この映画の残したテーマで 考えたことは、「過酷な過去から人は立ち直れるものだろうか」、という問いと、「母は子に何を残すのか」 ということだ。(点数 75点)
© Les Films Séville
カナダ映画「アンサンドゥ」を観た。
2011年アカデミー外国語映画賞にノミネイトされたが、「イン ア ベターワールド」が受賞したため、惜しくも賞を逃した作品。
レバノン生まれのカナダ人 ワジデイ ムアワッドの芝居を デニス ヴィルヌーブが監督して映画化した。アラビア語とフランス語で映画が進行し、英語の字幕がつく。130分。全編 ヨルダンで撮影された。
新鮮な驚きと強烈なインパクトに瞬きするのを忘れてしまった。(点数 70点)
(C) Vivo film,Essential Filmproduktion,Invisibile Film,ventura film.
きとし生けるものはすべて死ぬ。だが死は終わりではなく、命のリ
レーという形で次の時代に受け継がれていく。それは食べたり生殖し
たりするだけでなく、日々の暮らしの中で家畜を育て、消費し、再利
用することでもある。中世のたたずまいを残す小さな村を舞台に、人
と動物と植物、あらゆる生き物には必ず存在意義があると説く。一切
の説明やセリフ、音楽を排し長まわしを多用したドキュメンタリーの
ような手法は、時に退屈を覚えるほど変化に乏しい。しかし、映像と
自然の音のみで表現しようとする試みはイマジネーションを刺激する。