127時間 - 福本次郎

自分の人生はひとりだけで生きてきたのではない、多くの人々と関わって生かされてきたのだと気付く。(点数 70点)


(C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX

強靭な意志は時として人間に限界を超えた力を与えてくれる。身動き
がままならない状況を独力で切り抜けなければならない。襲い来る渇
きと空腹、痛みと絶望、映画は砂漠に取り残された主人公の壮絶な体
験を客観視するとともに、彼の脳裏に浮かぶ楽しかった思い出とこれ
から歩むであろう未来を映像化していく。そこにあるのは生まれ、今
まで生きてきたことへの感謝。明るい性格ではあるが、干渉を嫌い群
れるのを潔しとしない彼が、自分の人生はひとりだけで生きてきたの
ではない、多くの人々と関わって生かされてきたのだと気付く。

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飯と乙女 - 福本次郎

本能というべき食べたい衝動を原点に立ってみつめなおす姿勢が好ましい。(点数 50点)

人はなぜ食べるのか、なぜ食べないといけないのか。飢餓から解放さ
れた21世紀の東京において“生きるため”という答えに意味はない。
調理する者、食事を拒む者、幸せそうに食べる者、一度呑み込んだモ
ノを吐きだす者、映画は3組の男女の「食」にまつわるスケッチを元に、
人と食べ物の関わりを描こうとする。原始より、人間は食べ物を巡っ
て争い、胃袋を満たして命の喜びを感じてきた。その本能というべき
食べたい衝動を原点に立ってみつめなおす姿勢が好ましい。

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ロシアン・ルーレット - 福本次郎

極限状態における人間のメンタルだけで一本の作品を作ってしまうそのアイデアに敬服した。 (点数 80点)


(C) 2009 ALL RIGHTS RESERVED.

まったくの運任せ、プレーヤーが感じる無限の恐怖と緊張がスクリー
ン全体に漲っていく……。サークル状に並んだ17人の男が、それぞれ
前に立った男の後頭部に銃口を当て、ランプの点灯と共にトリガーを
引く。6分の1、3分の1、2分の1、3分の2、回を重ねるごとに死の確率
が上がり、脳みそが吹き飛ばされるか否かはすべて偶然に左右される、
そんな命がけのゲームに駆り出された男の心情が手に取るようにリア
ルで、思わず息を詰めて椅子から身を乗り出してしまった。

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赤ずきん - 福本次郎

時折挿入される“怪物目線”のショットは思わせぶりなだけで伏線として機能していない。(点数 40点)


(C) 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

森や草原で共に過ごした幼い日々は遠く過ぎ去り、ヒロインはたくま
しく成長した青年と恋に落ちる。しかしそれは母が決めた結婚に背く
許されざる行為。ふたりは自分たちの未来をつかむために手に手を取
りあって村を出る。ところが、彼女の姉の死で駆け落ち計画はあっさ
り中止、その後は人間対人狼のぬる~い闘いに終始する。だが、人狼
の造形がいかにも安っぽく見える上に、時折挿入される“怪物目線”
のショットは思わせぶりなだけで伏線として機能していない。

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オレンジとサンシャインと - テイラー章子

映画が始まってすぐに、見ている人たちの嗚咽が聴こえてきて、それが最後まで続いた。涙なしに この映画は見られない。(点数 80点)

どの国にも暗い過去、あまり他人に触れられたくない過去の汚点といわれるものがある。
日本でいうと、関東大震災直後の朝鮮人狩り、宣戦布告なき開戦パールハーバー、南京大虐殺、アイヌ土人法、部落差別、日本軍による沖縄人集団自決の強要、ハンセン氏病患者の隔離、調査捕鯨、東電の放射能垂れ流し、などなど、、、。

この映画は イギリスとオーストラリア両国政府の歴史的汚点である、「忘れられた子供たち」を明るみに出した映画だ。
いまのところ 明確になった事実は、1920年代から1970年代までの間に、13万人の 3歳から14歳までのイギリスの子供たちがオーストラリアに送られて、多くは孤児施設や教会施設で強制労働を強いられた というものだ。
子供たちの移送はイギリス政府とオーストラリア政府間の合意のもとに行われた。
政府間の間にたって、斡旋したのは救世会、カトリック教会、大英教会、その他 慈善団体だった。
ボートに乗せられ、オーストラリアに送られた子供たちの、多くは孤児ではなかった。
母親が病気で預けられていた子供たちや、子供を欲しがっている家庭に養子に出した貧しい家庭の子供たちや、戦争中 安全なところに避難させられた子供たちが多数含まれていた。

【ネタバレ注意】

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アリス・クリードの失踪 - 福本次郎

疑心暗鬼の中で言葉は鋭い刃となり、拳銃よりずっと強力に、人間を動かす武器になりうる恐ろしさをこの作品は教えてくれる。 (点数 70点)


(C) CINEMANX FILMS TWO LIMITED 2009

2人の犯罪者と1人の被害者、用意周到・完璧に練られた計画がわずか
なミスが原因でほころび始めるとき、3人の胸に秘めた企みが暴走する。
映画は誘拐犯と人質の3人のみで構成され、ほとんど会話だけで進行す
る。秘密と嘘そして罠、言葉という毒が登場人物の心に広がり、蝕ん
でいく様子が非常にリアルだ。若い犯人の苛立ちを“トイレの水に流
れない薬莢”で表現するあたり、小道具の使い方も洗練されている。

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X-MEN:ファースト・ジェネレーション - 福本次郎

精神的な成長こそが、この作品の真のテーマではないだろうか。(点数 70点)


X-Men Character Likenesses TM & (C) 2011 Marvel Characters, Inc. All rights reserved. TM and (C) 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

人とは違う特別な能力があるゆえに異端視され、時に敵視される。だ
からその能力を隠し息をひそめて暮らさなければならない。映画はミ
ュータントたちが歩む苦難の歴史にスポットを当て、真の敵は人間の
胸に潜む未知なるものに対する偏見や恐怖心であると喝破する。見た
目がノーマルな者は能力を制御できればごまかせる、だが、姿形その
ものが突然変異の結果と分かる種類のミュータントにとって、生きる
ことは人目を避け続けるのと同じ。そんな、外見にコンプレックスを
抱くミュータントの苦悩と葛藤がリアルに再現されている。

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さや侍 - 福本次郎

主人公と協力者がネタを思いつき芸に昇華させる過程で、松本人志は“笑い”の本質に迫っていく。(点数 50点)


(C) 2011「さや侍」製作委員会

刀はないのに、その鞘だけは決して手放そうとしない。それは戦いを
避けてきた男に残った最後の希望。そして彼は、誇り高く死ぬために
道化になり、道化を続けて誇りを取り戻していく。映画は切腹の代わ
りに慣れない一発芸を披露する侍と彼の娘を通じ、親子の関係の中で
真剣に人生に向き合う姿を描いていく。主人公が生みだす凍りついた
場の空気はそのまま現代の芸人たちが無名時代にライブで体験してき
た試練。彼と協力者がネタを思いつき芸に昇華させる過程で、松本人
志は“笑い”の本質に迫っていく。

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テンペスト - 福本次郎

彼の最後の戯曲は、400年の年月を経て、壮大なイマジネーションとCGという魔法の表現技術のおかげで21世紀に見事によみがえった。 (点数 50点)


(C) 2010 Touchstone Pictures

空を舞い水に揺らめく妖精は契約に従っていいなりになるしかない。
言葉巧みに住み処を簒奪された怪物は奴隷に身を落とされ小枝運びの
重労働に悪態をつく。女主人の魔法に縛められた者たちの怒りや苦悩、
後悔、そして自由へのわずかな希望。そんな胸の内を俳優たちは表情
だけでなく、指先からつま先まで使って表現する。一方で、この魔法が
作り出す巨大な嵐や炎を帯びた猛犬などはCGでより具体的に視覚化さ
れ、魔術と科学の境界が曖昧だった時代の人間の心理を再現する。

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奇跡 - 福本次郎

映画は、この年齢ならではの正直さと、芽生え始めた他人への思いやりや独立心といった繊細な感情をリアルに描く。(点数 50点)


(C) 2011「奇跡」製作委員会

鹿児島で母と暮らす兄、福岡で父と暮らす弟。小学生の2人はもう一度
家族を元に戻したいと思っている。心配性で理屈っぽい兄と楽天的で
開放的な弟、各々の長所がお互いの短所を補うかのような2人の性格は、
そのまま両親の遺伝。そんな子供たちが、子供たちなりに悩み、知恵
を絞り、大人の力を借りずに冒険しようとする姿がたくましくも微笑
ましい。映画は、この年齢ならではの正直さと、芽生え始めた他人へ
の思いやりや独立心といった繊細な感情をリアルに描く。

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パラダイス・キス - 福本次郎

映画は少女漫画のセオリー通りの設定で観客の乙女心を刺激する。(点数 40点)


(C) 2011「パラダイス・キス」製作委員会

「お前の意志はどこにある」、そう問われたヒロインは一言も返せな
い。期待を裏切るまいと親の顔色をうかがいながら優等生を演じてき
た女子高生が、彼女の生活にいきなり土足で踏み込んできた男の言葉
に衝撃を受ける。その出会いはまさに運命、彼女は自身が気づかなか
った己の可能性に目覚めていく。きらびやかなファッション、自信た
っぷりで強引な男、叶えられる夢。映画は少女漫画のセオリー通りの
設定で観客の乙女心を刺激する。受験という日常とファッションショ
ーという非日常のコントラストが鮮やかだ。

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光のほうへ - 福本次郎

高福祉政策を実現したデンマークが抱えるリアルな社会問題。(点数 60点)

アルコールに溺れる者、ドラッグに手を出す者、暴力の衝動を抑えき
れない者。決して根からの悪人ではないが、我慢の足りなさゆえ易き
に流れてしまう人々。本当は人並に働き家庭を持ちたいと願っている
のだろう、しかし、わずかなトラブルで責任を投げ出してしまう。映
画はそんな社会の底辺で生きる家族の姿を正面から見据え、人間の弱
さを赤裸々にあぶり出す。先の見えないトンネルで見つけた「子供」
という希望ですら、彼らにとっては重い負担でしかない。彩度の低い
冷やかな映像は、身につまされるようなわびしい感情を象徴している。

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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら - 福本次郎

根本的に野球に対する“真摯さ”に欠けている作品だった。(点数 30点)


(C)2011「もしドラ」製作委員会

もちろん原作に沿ってストーリーが構築されているのは分かっている。
しかし、ロクに捕球もできず練習もほとんどしない高校の野球部が、
いくらその意識を180度転換したからといって甲子園に出られるほど野
球は甘くない。せっかく映画にするのならば、原作にはなかった野球
のリアリティにもっとこだわり、「地方予選のベスト16くらいの実力
はあるが甲子園には届かない」レベルのチームにしていれば楽しめた
だろう。根本的に野球に対する“真摯さ”に欠けている作品だった。

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軽蔑 - 福本次郎

純文学的な非生産性が非常に魅力的に映る作品だった。 (点数 70点)


(C) 2011「軽蔑」製作委員会

とてつもなくアホでどこまでも世間をナメた男、でもその愛だけは本
物。夜の世界以外に行き場がなく誰からも愛された記憶のない、肉体
を見世物にするしか生きるすべのない孤独な女は、男の強引さに身を
ゆだねてしまう。カメラはそんなふたりにじっと寄り添い、まるで自
分たちがどこまで堕ちていくかを確認したがっているような自虐的な
彼らの行為を見守っていく。男に共感できる点はなく、女に同情する
余地はない。それでも破滅に向かって一直線に突き進む姿は、純粋な
までに感情のリアリティに満ちていた。

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終わらない青 - 福本次郎

己を愛せない彼女の絶望が切ないまでにリアルだった。(点数 60点)

自分は穢れてしまった。傷つき疲れ果て死んでしまいたいと願う少女
は、苦痛に満ちた思いを胸に地獄のような日々を送っている。誰も助
けてくれない、誰もわかってくれない。いや、それ以上に誰にも打ち
明けられない秘密が彼女の心に大きな重石となってのしかかる。映画
は、そんな運命に刃向かう術を知らないヒロインが、ほんのわずかに
芽生えた希望に縋りつこうとする姿を描く。凍りついた食卓で一家3人
が食事をとる場面がこの家に潜む狂気を象徴する一方、抜けるような
青空の下で真っ赤な傘をさす、その色彩のコントラストの鮮やかさが
彼女の苦悩の深さを物語る。

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