◆タフで優しい女2人が、人種を超えた絆を結ぶ(70点)
サンダンス映画祭でグランプリを獲得、アカデミー賞で脚本賞にノミネートと高い評価を受けながら、地味なるがゆえに日本での公開が危ぶまれていた作品。遅ればせながらも公開された背景には本来、配給は専門外である映画館「シネマライズ」の尽力があったらしい。その英断を称えたい。
◆タフで優しい女2人が、人種を超えた絆を結ぶ(70点)
サンダンス映画祭でグランプリを獲得、アカデミー賞で脚本賞にノミネートと高い評価を受けながら、地味なるがゆえに日本での公開が危ぶまれていた作品。遅ればせながらも公開された背景には本来、配給は専門外である映画館「シネマライズ」の尽力があったらしい。その英断を称えたい。
◆一見、ニール・サイモン風の恋愛会話劇に見えながら、叙述トリックで驚くべき展開を見せる。夫婦にとって互いの存在とは何かを問う、「喪失感」がテーマの秀作(81点)
小説に「叙述トリック」という言葉がある。ある事実をわざと隠すような書き方をして、読者に間違った先入観を持たせて驚きの展開に持って行く手法で、アガサ・クリスティーの「アクロイド殺人事件」などがその代表作だ。本作にはその叙述トリックが実に巧みに使われている。最初はニール・サイモン調のユーモラスな恋愛会話劇のように思えるが、中盤で驚くべき展開を見せる。そこから、前半の場面の様々な意味が全く変わってくる。
◆SFの醍醐味を十分に味わわせてくれる(90点)
ときは22世紀。車いす生活を余儀なくされていたジェイク(サム・ワーシントン)は、事故死した双子の兄に代って、地球から5光年離れた衛星パンドラへ向かった。彼は特殊な装置を使って、人間と現地人のナヴィ族のハイブリッドであるアバター(分身)なるものへ意識をリンクし、その肉体を自由に操ることに成功した。ある日、アバターの肉体を借りて森を探索していると、ジェイクは獣のヴァイパー・ウルフに襲われそうになる。が、運よくナヴィ族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)に助けられて……。
◆ヒロインのリスベットのルックスは一度観たら忘れられないほど強烈(75点)
世界中で大ベストセラーとなったスティーグ・ラーソン原作「ミレニアム」三部作の第一部を、ニールス・アルデン・オプレヴ監督が映像化した153分の力作。
◆恋愛に振り回される青年の500日を描く、記憶と空想に閉じ込められた物語。ズーイー・デシャネルの瞳の色が魅力的(84点)
「テラビシアにかける橋」(2007)で、ズーイー・デシャネルを見たとき、何と綺麗な瞳の色かと驚いた。それほど綺麗な瞳は、それまで見たことがなかった。以来、デシャネルは私にとっては特別な女優となった。
◆ふたりが生涯のパートナーとして絆を深めて行くくだりが感動的(70点)
1837年のイギリス。ときの国王ウィリアム(ジム・ブロードベント)は病に苦しみ、自身の死を予感していた。王位継承者のヴィクトリア(エミリー・ブラント)はまだ十代で、母から摂政政治を承認するように迫られていたが、これを断固拒否し続けた。そんな折、ヴィクトリアは、ベルギー国王の甥、アルバート(ルパート・フレンド)と出会う。ヴィクトリアは、誠実で公正中立なアルバートに惹かれ、少しずつその距離を縮めていくが……。
◆ガイ・リッチー監督作のホームズは喧嘩が強い!?(70点)
もう数えきれない程、映画化やテレビシリーズ化されている現代推理小説の生みの親アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」。ベーカー街221Bにあるハドスン夫人の所有するアパートに住む細身の長身で、エレガントな風貌の私立探偵という基本的なホームズらしさを踏襲しつつも、主人公ホームズ像も作品によって様々に工夫されてきた。
◆ウェス・アンダーソンの世界では父さん狐が渋くてカッコいい(85点)
アレクサンドル・デプラの軽快で心地良いサウンドトラックがまるでもう1つの脚本の様に、物語を綴ってゆくウェス・アンダーソン監督最新映画『すばらしき父さん狐(原題:FANTASTIC MR. FOX)』。ヘンリー・セリックに代わり、マーク・グスタフソンがアートディレクションを手掛け、哺乳類の動物たちを擬人化させた人形がストップモーションでアクションや家族ドラマを繰り広げる。それらの動物の人形の声に扮するのも、ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ、ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイ、マイケル・ガンボン、と演技派で豪華なハリウッドスター達。全てCGで作られるアニメが主流となり、加えアニメの3D化も進んでいるだけに、本作は新鮮で贅沢な時間を提供してくれる。
◆混じりけのない壮大な大自然と、清濁を併せ呑む人間。そのコントラストが、見る者の心をゆさぶる(85点)
"神が住む山"と称されるチベット山岳地帯の秘境"ココシリ"──。海抜4700m、零下20℃、空気濃度は地上の1/3という想像を絶する過酷な大自然を舞台にくり広げられる物語。実話に基づいた見ごたえのある骨太映画である。
◆ナチス統治下の重苦しい時代の空気感を巧みに表現している(70点)
1944年。ナチス占領下のデンマーク。ナチス・ドイツに対するレジスタンス(地下抵抗活動)の一員であるフラメン(トゥーレ・リハンハート)とシトロン(マッツ・ミケルセン)は、上層部からの命令にしたがって、ナチスになびいた売国奴の暗殺を実行していた。ある日、組織の上層部はフラメンの恋人ケティ(スティーネ・スティーンゲーゼ)を密告者と見なし、ふたりに殺害を命ずる。ところが、当のケティからは逆に「組織の上層部が自分たちに都合の悪い人間を『売国奴』としてフラメンとシトロンに殺させている」という旨を告げられる。ふたりは「自分たちは組織にだまされて、無実の人間を殺していたのか?」という罪の意識に呵まれ、しだいに疑心暗鬼になっていく……。
◆緻密で生命力溢れるジェームズ・キャメロンの革新的な映像の洪水(80点)
人類が利益を優先しなくなる日は訪れないのだろうか。実に1997年の『タイタニック』以来12年振りのジェームズ・キャメロン監督最新作『アバター(原題:AVATAR)』は22世紀が舞台。しかし、この映画の世界の人間も現在と同じくやはり貪欲で残酷。また、未来ではまだ貧富の差も存在し、貧困層は金に利用される。このキャメロン氏渾身の1作では、美しい大自然に覆われた神秘の惑星“パンドラ”を舞台に、金に執着した救い様のない人間の姿を映してゆく。
◆若き女王の愛と葛藤を活写(70点)
ケイト・ブランシェットがエリザベス1世を演じると聞いても、多くの映画ファンは特に驚かなかったと思うが、エミリー・ブラントがヴィクトリア女王を演じるというニュースには、多くのファンが首をひねったのではないか。ヴィクトリア女王といえば、イギリスを「太陽の沈まぬ国」に発展させた同国きっての名君である。対するエミリー・ブラントは、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープに奴隷扱いされていたアシスタントだ。あるいは『サンシャイン・クリーニング』で人生を投げていたフリーターだ。とても偉大な女王を演じる器とは思えなかったのだが……。
◆ジェームズ・キャメロン監督が3Dの歴史を変えるといわれたSFアクション。「映像革命」は本当だった(93点)
日本中のシネコンが今年、急ピッチでデジタル3D施設の整備を進めてきたのは、本作のためだと言っても大袈裟ではないだろう。ジェームズ・キャメロン監督が構想に14年、製作に4年を費やしたという「アバター」は、単なる3D映画ではなく、「映像革命」だと伝えられてきた。果たして「革命」は成功したのか? 答えはイエスだ。
◆中山美穂が12年ぶりに主演し、夫・辻仁成の原作で激しいラブシーンを演じた話題作。イ・ジェハン監督は単なる恋愛映画とせず、中山美穂を戦後日本が失った「夢」の象徴として描いているところがいい(80点)
古いホテルには、「魔物」が棲み着くものだ。
本作は恋愛映画に違いないが、どこかファンタジーのようにも思える。中山美穂が演じる主人公・沓子の存在が、余りに非現実的なのだ。バンコクのオリエンタルホテル(旧ザ・オリエンタル、バンコク)のスイートルームに住み続け、いつまでも男を待っている女。浮世離れしていて、すべて男の幻想ではないかと思えるほどだ。この幻想味こそ、本作の最大の魅力であり、監督のイ・ジェハンはじめ韓国の手練れのスタッフが、すべて中山美穂のために作り上げた仕掛けだ。12年ぶりの映画主演となる中山は、幻想のマジックの中で光り輝いている。