◆演出にキレがある訳でもなく、ドラマ展開も冗長気味。汁系のユーモアに至っては完全にマニア好みだ。しかし同時に、息づかいと生命力が感じられる作品でもある(70点)
弱冠26歳の映画監督、石井裕也。「ぴあフィルムフェスティバル」のコンペティション第29回PFFで「剥き出しニッポン」がグランプリを受賞、アジアでは「第1回エドワード・ヤン記念 アジア新人監督大賞」を受賞するなど、国内外で高い評価を得ている注目の才能だ。
◆演出にキレがある訳でもなく、ドラマ展開も冗長気味。汁系のユーモアに至っては完全にマニア好みだ。しかし同時に、息づかいと生命力が感じられる作品でもある(70点)
弱冠26歳の映画監督、石井裕也。「ぴあフィルムフェスティバル」のコンペティション第29回PFFで「剥き出しニッポン」がグランプリを受賞、アジアでは「第1回エドワード・ヤン記念 アジア新人監督大賞」を受賞するなど、国内外で高い評価を得ている注目の才能だ。
◆亜紗美が繰り広げる格闘シーンは秀逸であり、身動きやパンチ、キックに不自然さを感じさせず、キレ味も抜群(75点)
短編オムニバス『893239(ヤクザ23区)』内の『やくざハンター』が話題を呼び、東亜英樹名義でこれを手懸けた奥田真一と中平一史がそれぞれ単独で撮った『スケ番☆ハンターズ』二部作が誕生した。
◆『スター・ウォーズ』愛を超越した映画愛を感じられた傑作だ(75点)
『スター・ウォーズ エピソード1 ファントムメナス』公開を控えた1998年。中古車販売店勤務のエリック(サム・ハンティントン)は、ハロウィンの夜に『スター・ウォーズ』好きの高校時代の友人たちと再会する。だが、そのうちの一人ライナス(クリストファー・マークエット)は末期ガンに冒されており、余命わずか。『エピソード1』公開まで生きているかどうかわからないということで彼らはルーカス・フィルムの本拠地“スカイウォーカー・ランチ”に侵入していち早く鑑賞することを目的にした旅に出るが……。
◆デジタルとアナログを巧みに使い分けた狼男のビジュアルは、いかにも着ぐるみ気分なB級路線とは一線を画し、狼男の野獣としての異様さを生々しく描き出す(70点)
1891年、ロンドン郊外の農村に建つタルボット城に、舞台俳優のローレンス(ベニチオ・デル・トロ)は帰ってきた。兄ベンの婚約者グエン(エミリー・ブラント)から、兄が行方不明になったとの連絡を受けたのだ。結局、兄は無惨に切り刻まれた死体となって発見された。ある満月の夜、ローレンスも野獣に襲われて重傷を負う。その日以来、ローレンスは満月の夜になると体が異状をきたす身となった。ローレンスは献身的なグエンに惹かれていく一方で、以前から確執のあった父ジョン(アンソニー・ホプキンス)の不可解な行動に疑念を抱きはじめる……。
◆シリーズ10周年、劇場版として3作目。これまでのシリーズとほぼ同じ展開はマンネリだが、そこがいいところでもある(72点)
テレビ朝日の深夜番組としてスタートしてから、深夜ドラマが2シーズン、夜9時台での放送が1シーズン、スペシャルが2本(1本は現時点ではまだ放送されていない。2010年5月15日放送)、そして劇場版が本作を入れて3本。今年で10周年を迎えるシリーズは、これほど長く続いているのであるから、多くの人に愛されているといって言いだろう。10周年記念の本作の内容は、堤幸彦監督が一種のシニカルなジョークとして、舞台となる村を「万練村」と名づけたように、全くの「マンネリ」だ。これまでのシリーズの集大成でもあるし、単なる繰り返しでもある。本作の場合は、それでいいのだ。
◆ニュージーランド、エジプト、日本の自然と世界遺産を、地球観測衛星からの映像と、4K3Dデジタルカメラによる映像で描いた立体映画。38分の短編だが、3D本来の魅力が存分に味わえる(71点)
日本における「3D元年」といわれた昨年から今年にかけて、デジタル3D作品が次々と公開されている。アニメーションやモーション・キャプチャーについては、立体効果に満足した作品が多かったが、実写となるとどうか。モーション・キャプチャーと実写が融合した「アバター」は別として、「アリス・イン・ワンダーランド」は妙に画面が暗く、「タイタンの戦い」は殆ど飛び出す感じがなかった。実写の3Dは果たして成功しているといえるだろうか。
◆沈滞する地方都市に美少女たちが喝!(70点)
地方在住の女子高生が得意の書道で町おこしに一役買った実話を映画化。部室での衝突や友情といった普遍的な題材に、活力を失いゆく地方都市という今日的なテーマを織りこみ、瑞々しい作品に仕立てている。四国中央高校で書道部長を務める里子(成海璃子)は、新任顧問の池澤が衆人環視の中、音楽に合わせて巨大な半紙に字を書いたのを見て、「邪道だ」とショックを受ける。だが文房具屋の娘の清美(高畑充希)は、廃業を決めた父親のために商店街でそのパフォーマンスを披露しようと決意。里子らも成り行きで協力するのだが……。
◆世の中にファックユーと言いたい大人の男達の為の応援歌(70点)
40代の迷える3人の男達を主人公としたスティーヴ・ピンク長編初監督映画『HOT TUB TIME MACHINE』。まだマイケル・ジャクソンの顔の色が黒かった時、彼らは人生最高の日々を送っていたが、その時想い描いた未来予想図とはまるで違う現実に打ちのめされ現在人生座礁中。モトリー・クルーの「ホーム・スイート・ホーム」を始めとする、全編80年代のヒットソングで飾られる本作はとことん馬鹿で楽しく、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』を彷彿とさせる、男たちが日常を忘れハメを外そうとするコメディ。しかし、本作がタダのお馬鹿映画ではないのは、悲しい悲しい要素が底辺に広がっているから。
◆手持ちカメラを駆使した臨場感溢れるアクションシーンが秀逸(75点)
マット・デイモンとポール・グリーングラス監督が『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』に続いて三度目のタッグを組んだ戦争系サスペンス・アクション。
◆人形たちと機械獣のバトルを大きな見せ場にしており、派手なアクションシーンとして描いているのが何よりも良い(75点)
第78回アカデミー賞で短編アニメ部門にノミネートされたシェーン・アッカー監督の同名作品をティム・バートンが大いに気に入り、彼の製作で長編化された。監督は短編同様にシェーンが務めた。
◆目新しさはないが、ひとりの少女の喜びと痛みを描いたオーセンティックな青春映画としてオススメ(75点)
「ハイ・フィデリティ」(2000年)や「アバウト・ア・ボーイ」(2002年)の原作者ニック・ホーンビィが、英国の辛口ジャーナリスト、リン・バーバーのとある回想録を脚色。監督に女流のロネ・シェルフィグ、主演に若手女優キャリー・マリガンを起用した本作「17歳の肖像」は、街並からファッションまで、1960年代の空気感をたっぷりと漂わせたイギリスを舞台に、大人の世界へと足を踏み入れる17歳目前の少女の成長と挫折を描いた秀作。キャリー・マリガンは、メリル・ストリープらオスカー候補者を抑えて、英国アカデミー賞の主演女優賞に輝いている。
◆ジョニー・トー監督独特の、芸術的なまでの銃撃戦を堪能できるフィルム・ノワール(83点)
ジョニー・トーが「ヴェンジェンス 報仇(原題)」を撮ると聞いて、ショウウ・ブラザースのチャン・チェ監督作のリメークかと思ったが、全く違っていた。主演はフランス人のジョニー・アリディ。香港とフランスの合作で、最初はアラン・ドロン主演のフィルム・ノワールとして準備されていたという。ドロンが脚本を気に入らず、出演を取りやめたらしい。それはそうだろう。ストーリーはよく出来ているとは言えない。脚本を読んだだけでは、本作の魅力は伝わらないだろう。なにせ、「間合い」の映画なのである。男同士が敵になるのか、味方になるのか。撃ちあうのか、撃ちあわないのか。どのタイミングで銃撃戦が始まるのか。全ては相手と向き合い、「間合い」を計ることで決まる。映画はその「間合い」をじっくりと見せる。男たちが黙って顔を見つめ合う緊張感。それが一気に凄まじい銃撃戦へと転じる瞬間のエクスタシー。脚本では絶対に分からないトー作品の醍醐味だ。
◆希望が持てない今の世の中で、どうやって頑張ればいいのか。その問いに、実に痛快な答えを出してくれるコメディーの秀作。主人公を演じた満島ひかりが素晴らしい(82点)
槇原敬之は「世界に一つだけの花」で、ナンバーワンにならなくても、オンリーワンになればいい、という意味のことを歌っている。名曲だとは思うが、私はこの歌が好きではない。自分も含めて多くの人は、所詮、ナンバーワンにもオンリーワンにもなれないと思うからだ。「オンリーワン」といえるようなものを持っている人が、果たしてどれだけいるのだろうか。
◆モダン・ゾンビの祖、ジョージ・A・ロメロのゾンビ・サーガ最新作。これまでの作品に比べ、緊迫感は薄れたが、人間同士の戦いをメーンに新しい切り口に挑戦している(79点)
すでに70歳を超えるジョージ・A・ロメロの新作を見ることが出来るのはとても嬉しい。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の製作は1968年。それから42年がたち、ロメロの生んだ(ブードゥーではない)モダン・ゾンビは世界中で様々に進化し、増殖してきた。その間、ロメロも常に新しいゾンビ映画を、一種のサーガとして作り続けてきた。本作はロメロの6本目のゾンビ映画だ。これまでの作品と大きく違うのは、人間とゾンビの戦いではなく、人間同士の戦いがメーンとなっていることだろう。人間もゾンビも、「攻撃してくる者」「戦う相手」として、同じように描かれている。
◆ユニバーサルの名作「狼男」のリメーク。リック・ベイカーの特殊メークは素晴らしいがストーリーが中途半端(72点)
ロン・チェイニー・Jr主演の「狼男」(1941)は日本未公開だが、ユニバーサルの怪奇映画の名作だ。後に、「狼男の殺人」のタイトルでTV放映され、多くのファンを生んだ。「フランケンシュタイン」(1931)なども担当したメークアップ・アーティストの巨匠、ジャック・ピアースの特殊メークが素晴らしく、森の中を狼男がさまよう場面の怪奇ムードは、今見てもわくわくさせられる。