BOX 袴田事件 命とは - 福本次郎

◆日々、執行官の足音に脅えながら拘置所で朝を迎える死刑囚のみならず、判決を下した裁判官の人生も狂わせていく死刑制度。心理的に追い詰められた状況で自白を強要されていく恐ろしさが、生理的なリアルさをもって描かれる。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 警察の思い込み捜査、刑事による拷問のような取り調べ、さらに検事による高圧的な尋問。公権力の前では一個人はこれほどまでに無力で、魂ですら打ち砕かれていくものなのか。映画は、袴田事件は冤罪・捏造という仮説にたち、人を裁き人の命を奪う判決を出すことがいかに葛藤をともなうものであるかを物語る。日々、執行官の足音に脅えながら拘置所で朝を迎える死刑囚のみならず、判決を下した裁判官の人生も狂わせていく死刑制度。心理的に追い詰められた状況で自白を強要されていく恐ろしさが、生理的なリアルさをもって描かれる。

 みそ製造会社専務一家が刺殺・放火され、従業員の袴田が逮捕される。裁判では、袴田のでたらめな自白と証拠の少なさに疑問を持った裁判官の熊本が慎重に審理しようとするが、法廷内は有罪の空気が支配的。熊本は不本意ながら死刑の判決文を書かされる。

 物拠は血痕がついたパジャマ、後は袴田の自供のみというお粗末さなのに、弁護士は検察側主張の矛盾点を突くでもなくあまりやる気がない。唯一取り調べ時間の長さに着目した熊本だけが、判決に附文を付ける裏ワザで何とか良心の呵責から逃れようとする。裁判官を辞めても後悔は熊本に付きまとうのだが、それほど精神をすり減らすのならば、なぜもっと早く袴田の支援活動を起さなかったのか。裁判官の守秘義務もあるのだろうが、判決文を書いた張本人なら悩むより先に行動を起こすべきだろう。彼が躊躇している間にも袴田に刑が執行される可能性もあるわけだし。

 熊本は独自の調査で証拠のいい加減さを証明しようとするがすべて却下され、高裁、最高裁と判決は覆らず袴田の死刑は確定する。相当な年月を経て熊本はやっと裁判の欺瞞を告発するが、その間、袴田は死刑囚用の独房で神経をすり減らし、熊本は家族と共に暮らす。熊本の苦悩がどれほど深いものであっても、袴田が体験した苦痛には遠く及ばないはず。裁判制度のあり方と40年以上にもわたる時の長さ、そして真実とは一体何なのかを改めて考えさせられた。

福本次郎

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