9 ~9番目の奇妙な人形~ - 岡本太陽

9 ~9番目の奇妙な人形~

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◆鬼才ティム・バートンが目を付けた才能(50点)

 今年は2009年という年のためか、夏のアクション映画『DISTRICT 9』や全米で年末公開を控え話題になっている『NINE』等、数字の"9"をタイトルに含む映画が目立つ。アニメ界にもその現象は見られ、『9 ~9番目の奇妙な人形~』という最新のCG技術を駆使した映画が秋の始まりと共にその全貌を現した(しかも、米国公開日は2009年9月9日!)。

 良い心を持つ主人公の9(イライジャ・ウッド)はバービー人形くらいの大きさの全身布で覆われた人型のロボット。彼(実際は性別はないと思われる)はある部屋で目覚める。そこにはある男性の死体があり、部屋の窓から外を見ると、破壊された街が広がっていた。9は部屋に落ちていた不思議な石を胸のジッパーを開け懐にしまい、外の世界を探索し始める。そしてすぐに背中に番号がある発明家の2(マーティン・ランドー)に出会う。

 9のいる世界はなんとなくヨーロッパ風の機械に支配された世界。ここではその昔、ある科学者が人工知能を搭載した脳の役割を果たす画期的なロボットを作り出した。ところが、それを政府が無理矢理取り上げ、戦争用のロボットを生み出すために使用した。しかし、ロボット達は人間に反逆し、その上命あるもの全てを消し去る様に自らプログラムしたせいで地球は荒野と化した。人工脳を生み出した科学者は混乱の中、自分自身の魂を分け与えたスチィッチパンクスと呼ばれる人間性を兼ね備えた人型ロボットを作った。作った順に番号(名前)を与え、最後の9を完成させると同時に、ついに彼は死んでしまった。

 本作の監督は『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』でCGアニメーターを務めたシェーン・アッカー。ヤン・シュヴァンクマイエルやブラザーズ・クエイにオマージュを捧げ制作した、2005 年の彼の同名ショートアニメが、鬼才ティム・バートンの目に留まったのをきっかけに、バートン、そして『ナイト・ウォッチ』のティムール・ベクマンベトフをプロデューサーに迎え、アッカー氏自身で短編から88分の長編映画として作り上げたのだ。

 『9 ~9番目の奇妙な人形~』のアイデアは古くはフリッツ・ラングの『メトロポリス』、近年では『マトリックス』や『WALL・E/ウォーリー』等と同種のもの。そのうち自分達が作り出したロボットに支配されてしまうかもしれない、という人間の潜在的恐怖が根底にある。そして本作ではそれが実際に起こった世界が舞台で、スティッチパンクスを人間の良い部分も悪い部分も持ち合わせた者達、命を消し去ろうとする無感情なロボット軍団を完全なる悪として描いている。

 9は2の他、ジョン・C・ライリー、ジェニファー・コネリー、クリスピン・グローヴァー扮するスティッチパンクスに出会う。8は図体がでかくちょっと意地悪で、7は一匹狼的戦士、6は芸術家、5はヒーラー、双子の3と4は好奇心旺盛な恥ずかしがり屋、そして1は9とは正反対の性格を持つ者として描かれる。9は途中で遭遇するモンスターロボットも怖がらない、自分達が存在する意味(真実)を知りたい探求者。それに比べ、スティッチパンクスの中で一番年長の1は変化を嫌う臆病者。この2人の立場は、アメリカにおける変化を優先した民主党のオバマ大統領と、保守的で変化を求めない共和党議員の様に見えなくもない。

 美しいCG映像が目を見張り、ダークな設定が大人の好奇心も掻き立てる『9 ~9番目の奇妙な人形~』だが、本作の決定的な弱点は詳細が不明である事。例えば、どうしてスティッチパンクスは皆布で覆われているのか、生物を根絶やしにしたはずのロボットはどこへ行ってしまったのか、という単純な疑問が解決されないため、観る側は納得いかないまま展開を追っていかなくてはならないのだ。これならば、素晴らしいグラフィックを誇るFFシリーズ等のゲームのアニメーションとなんら変わりはないのではないのか。監督シェーン・アッカー氏のショートアニメ映画版は約10分。それくらいの長さがこの物語には相応しいのかもしれない。

岡本太陽

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