7つの贈り物 - 前田有一

「幸せのちから」に続くウィル・スミス主演・感動作(65点)

 キリスト教圏の映画で数字の7が出れくれば、それは彼らの宗教にかかわるテーマやモチーフということ。『7つの贈り物』ももちろんそうで、最初のモノローグで主人公は、7日間で世界を創造した主と自らの人生を比べ、自嘲気味に語る。それがいったい何を意味するのか、ラストで驚きとともに明らかになる。

 国税局の役人ベン(ウィル・スミス)は、7人のリストを手にある計画をすすめていた。まず、それぞれにアプローチし、彼らがベンの意に沿う人物かどうか確かめる。「合格」だった場合は、その運命を変えるほどの「贈り物」をするのだ。だがその計画は、魅力的な女性エミリー(ロザリオ・ドーソン)と出会い、徐々に狂っていく。いったいベンの最終目的は何なのだろうか。

 見た後、よく似た話やアニメーション作品がすぐに頭に浮かんだが、タイトルを書くと結末が一発でばれるので自粛する。

 ウィル・スミスといえば、ハリウッド有数の子煩悩な人物として知られるが、最近関わった作品は、どれもまるで息子のためにいい作品を残したいという親心から選んでいるかのようだ。そのひとつで、息子思いのホームレスが一念発起する『幸せのちから』に続く、ガブリエレ・ムッチーノ監督とのコンビとなる本作も、宗教的テーマを想起させる感動作。

 とはいえ、前作のようなストレートなものではないから、泣きたい人に無条件で薦めたくなるタイプの映画ではない。見終わった後、その表現しようとするものを、時間をかけて考えたくなるような映画だ。

 ややマイナスに感じる点は、主人公の目的が最後まで伏せられているため心理を読みきれず、その主観による物語に対してもいまいち没頭しきれぬ部分。

 中盤におけるヒロインとのロマンスも、本物なのか計画の一部なのか、ほんのわずかだが戸惑う。その結果、そこまで"謎への興味"で引っ張ってきた物語が、このロマンスの部分だけ中だるみする。この恋愛が必要な要素であることは自明だが、役者ウィル・スミスの善人オーラに頼るだけでは物足りない。

 驚きのラストは、確かにビックリするもので、ウィル・スミスの深刻な表情の演技など、大いに身に迫る。いくつもの伏線が明らかになる展開は、もう一度最初から見たくなる事請け合いだ。じっさい、この手の映画は、オチを知った上での2度目の鑑賞の方が評価が上がるもの。ころあいを見て、私も見直してみたい。

前田有一

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