◆複雑な心情を抱く主人公ベンの心理描写が巧み(70点)
『アイ・アム・レジェンド』、『ハンコック』とお得意のSFアクションが続いたウィル・スミス。そんな彼が再びドラマ作品に挑戦した。二年前に主演した『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督と再びタッグを組んで「贖罪」をテーマにした感動系人間ドラマだ。
ベン・トーマス(ウィル・スミス)という男は、かつての過ちが原因で心に傷を持っている。彼が見知らぬ七人の他人に人生が永遠に変わるような贈り物を渡そうと行動する。
複雑な心情を抱く主人公ベンの心理描写が巧みであり、ウィルが悩んだり、涙を流したりと巧く表現した演技も抜群だ。特にウィルのこのような姿が観られるのは実に珍しく、役者としてさらにレベルアップしていることがわかる。
“ベンの過去に何があったのか?”、“贈り物を渡す相手が何故七人の他人なのか?”、“贈り物とはいったい何か?”といったことが気掛かりとなり、このようなミステリー作品的な要素が観る者を惹きつける。同時に七人の他人のうちの一人である心臓病を患う女性エミリー(ロザリオ・ドーソン)とのラブストーリーも用意されている。
ストーリーが進むにつれて謎のヒントとも言える映像が少し映し出され、終盤に向けて徐々に解明されようとする。そして、ラストシーンでは衝撃的なシーンが待ち受けており、これが観る者をとことん驚愕させ、背筋が凍るようなゾクゾク感を味わわせる。同時に気になっていた謎の全貌が一気に明らかになる。このラストシーンで大きな面白さが味わえるが、後味が悪く思える点がマイナスだ。
(佐々木貴之)