◆ウィル・スミスが究極の贖罪を敢行(70点)
通販会社の電話オペレーターとして働く盲人にしつこくクレームをつける。入居者を虐待する老人ホームの経営者に、「お前には、やらない!」と謎の言葉をぶつける。『7つの贈り物』は、主人公のこんなシーンから幕を開ける。どうやら彼は「いい人間」を探しているらしい。でも、いったいなぜ?――と思った時点で、あなたは作り手の術中にはまっている。
主人公のベン(ウィル・スミス)は、許されざる過ちを犯し、「7秒間で人生を破滅させた」男だ。その贖罪のために、彼はある過激な計画を実行に移している。情報を小出しにし、ベンの意図を巧みに隠した序盤の作りは、好奇心と期待感をかき立てるに十分。ベンが“対象者”の女性(ロザリオ・ドーソン)に惹かれ始める中盤以降は、謎の計画という縦糸に、ロマンスという横糸も織りこまれる。
ベンの計画の詳細を明かすことはご法度なので、ここではオスカー・ワイルドの「幸福な王子」を連想させるとだけ書いておこう。この童話、虚心に読めば無私の精神への賛辞なのだが、どこかで反発や懐疑を感じさせることも事実。「自分さえよければ他人はどうなってもいい」という利己主義と同じように、その真逆もまた、あまり勧められたことではないように思えるからだ。
ベンが親友(バリー・ペッパー)の手を借りてやろうとしているのも、利他的行為の最たるもの。童話の中でそれをしたのは銅像とツバメだったからギリギリのところで納得がいったが、生身の人間であるスミスやペッパーにそれをされたら、さすがに道徳的な疑問が湧く。なんとか違う結末を考えてくれていたら、より感動も深まっただろうに。伏線の効きのよい、技巧的には上々の作品だっただけに、感情的に寄り添いにくくなってしまったのが惜しい。
(町田敦夫)