やはり持つべきものは友、言い古されたことをさらりとしかししみじみと感じさせる。(点数 70点)
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5年後生存率が50%なのに、実感がわかずどこか他人事のよう。母親は
過剰に干渉し、恋人は逃げ出してしまっても、対応に追われる自分を
別の自分が観察しているかのごとき距離感が心地よい。そんな、いつ
もはにかんだ笑顔で感情をコントロールし、なるべく周囲に迷惑をか
けまいと振る舞う主人公の心情が濃やかに描きこまれる。もちろん死
ぬのは怖い、だがじたばたする姿を見せるのもみっともない。重篤な
病に侵されながらも事実を受け止め、悲壮感を漂わせず淡々と治療を
受けていく過程が清々しい。
【ネタバレ注意】
ラジオ局に勤めるアダムは腰部のガンと診断され、抗ガン剤の点滴を
受ける。病院への送り迎えをしてくれていたガールフレンドは去り、
親友のカイルとつるんでいるが、徐々に体調が悪化していく。
病状の進行による体の変化よりも、彼の病気を知った人々の変化にア
ダムは戸惑う。憐れみを含んだ目で見られたり、必要以上に気を回さ
れたり、特別扱いのせいで居心地悪い思いをする。だが、カイルだけ
はアダムのガンを利用してナンパしたりするなど、アダムが落ち込ま
ないように笑わせ励ましてくれる。
やがて行状は悪化し、手術しないと助からなくなるが、そんな時もカ
イルはいつもアダムのそばにいる。やはり持つべきものは友、言い古
されたことをさらりとしかししみじみと感じさせるその後の仕掛けは
非常に洗練されていた。
(福本次郎)