3時10分、決断のとき - 前田有一

男性こそ見るべき、現代の西部劇(70点)

3時10分、決断のとき

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 「決断の3時10分」(57年)を07年にリメイクした本作は、好評ではあったが公開がかなり遅れた。西部劇の新作じたいほとんど見られない昨今、日本で劇場公開されたことだけでも御の字といったところか。西部劇で映画の楽しさを知った身としては、少々寂しい気もする。

 南北戦争で脚を負傷し、いまだ不自由なダン(クリスチャン・ベイル)。そのせいで牧場経営もうまくいかず、生活は苦しくなるばかり。そんなある日、ダンは、有名な強盗団のリーダー、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)が捕まる場に出くわす。ウェイドを裁判所まで護送するため、3日後の3時10分に発車するユマ行きの電車に乗せねばならないが、駅までの道のりにはウェイドの部下が多数待ち伏せ、命の保証はない。そこで保安官は護送を手伝うボディガードを募集、ダンは借金を返すために名乗りを上げる。

 息子との重要な関係性を、リメイク版オリジナルの要素として織り込み、現代人を共感させる脚本へと蘇らせた。責任感から、命がけの無茶な仕事をひとり成し遂げようとする主人公の姿は同じだが、その動機付けが少々異なる。50年もの時代を隔てた新旧の主人公が、それぞれ何に責任を感じているのか、その違いを考察するのも面白い。

 西部劇につきもののガンアクションは物語の流れの中で自然に起こり、それ自体が爽快感を与えるようなものではない。それよりはむしろ、にっちもさっちもいかなくなった一人の男の最後の意地、分不相応にさえ見える無謀な挑戦の行く末にハラハラする、サスペンスドラマとしての魅力が大きい。

 ハッスル父さん大活躍、とすっきりいけばいいのだが、むしろ大物なのは護送されている大ギャングの方。悪党ながら人生の達人であるウェイドと、遅すぎたチャレンジに手一杯な小市民のダン。この二人が、互いにどこか惹かれ、欠けているものを学び取る「男のドラマ」としても、たいへん見ごたえがある。

 とくに熱いのはラスト5分。ここで観客は想像を超えた展開に驚き、涙することになるだろう。

 わずかな金を目当てに悪に寝返る町の人々の姿は、一見非現実的でこっけいでさえあるが、それこそが本作の大きなテーマ。良心、道徳、男の生き様。どんなに不利な状況になろうとも、息子に堂々とみせられる選択をできるかどうか。男の人生とは、いってしまえばその一点にかかっているといってもいい。それをこの傑作リメイク西部劇は教えてくれる。

前田有一

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