利益と効率ばかり重視する現代社会で、誰からも求められない寂しさが、愛嬌のある容姿をした主人公を通して表現される。(点数 50点)
(C) 2011「豆富小僧」製作委員会
妖怪なのに人間から怖がられないばかりか、バカにされてしまう。仲
間からも非力を笑われ、父からは怒鳴られる。そんな妖怪が、いなく
なった母を探す過程で、自分にもできることを見つけていく。映画で
は、利益と効率ばかり重視する現代社会で、誰からも求められない寂
しさが、愛嬌のある容姿をした主人公を通して表現される。何かの役
に立ちたい、でも己には知恵も力もない、そう思い込んでいる彼が、
友人たちとの触れ合いの中で自らの使命に目覚めていく姿が愛おしい。
父と大喧嘩して妖怪の森を飛び出した豆富小僧と友人の達磨先生は、
タヌキに化かされてお堂に閉じ込められる。お堂が壊されて外に出る
とそこは現代の東京。ふたりはアイちゃんという少女と知り合う。
もはや科学万能の21世紀、未知のものに対する恐れをなくした人間に
は、妖怪が見えない。ひとりアイちゃんだけに見えるのは彼女にまだ
自然を畏れ敬う気持ちが残っているから。豆富小僧には人間の愚行を
目の当たりにしても、止める能力はない。それでも、彼に「あなたに
はあなたの役割がある」とアイちゃんが語りかけるシーンは、この世
に必要のない存在などないという強烈なメッセージとなっている。
映像は初期のCGアニメのようなレトロなタッチ。どこかほのぼのとし
ていて、アクションシーンのスリルは抑えめ。なによりいちばん恐れ
られるべき死神ですら、不気味な外見に似合わぬちょっと不良っぽい
しゃべり方でおどろおどろしさを消している。
(福本次郎)