「バカになること」に、初美自身が快感を覚え、やがてはそれを目指すようになっていく姿がほほえましい。(点数 40点)
(c)2011「これでいいのだ!!」製作委員会
子供の遊びに本気で熱中し、泥酔するまで酒を飲んで胸にしまった鬱
憤を解放する。本当のバカになる、それは恥ずかしいとか迷惑をかけ
るとかいった良識のブレーキを外し、素の自分をさらけ出すこと。赤
塚不二夫が紡ぎだすギャグとナンセンスの数々は、そんな欲望を刺激
し、バカになり切れない人々の代わりにキャラクターにバカをやらせ、
胸の奥に潜む真実を鋭くえぐりだす。
小学館に入社した初美は少年サンデーに配属され赤塚の担当になる。
ところが、赤塚がライバル誌の少年マガジンで「天才バカボン」の連
載を始めたため、サンデーの「おそ松くん」は打ち切りになる。
インテリが集っているはずの出版社で、理性と知性を否定される初美
が感じるギャップがリアルだ。マンガといえども人間の本性を表現す
るには頭の中を一度カラッポにしなければならない、入社式で1人“シ
ェー”ができなかった初美が、作家と付き合う意味と意義を身につけ
るうちに、心身ともに作家同様に打ち込まなければ読者の心をつかむ
作品は完成しない現実を知っていく。プライドゆえあれほど軽蔑して
いた「バカになること」に、初美自身が快感を覚え、やがてはそれを
目指すようになっていく姿がほほえましい。
映画は、赤塚と初美がバカになり切るために酒の力を借りて大暴れ、
その挙句ドタバタ喜劇の様相を呈してくるのだが、結果的に見ている
ほうが恥ずかしい喜劇になってしまった。
(福本次郎)