釣りバカ日誌20 ファイナル - 前田有一

◆長きにわたるコメディシリーズもこれで最後(35点)

 『男はつらいよ』以来の、松竹を代表する大型シリーズもついに最終回。だが『釣りバカ日誌20』は、あきれるくらいいつもと変わらぬおバカ映画であった。

 世界的不況の中、ゼネコンの鈴木建設も苦しんでいた。自らの給料の無期限全額返還を実行する会長の鈴木一之助(三國連太郎)だが、その危機を救ったのは意外にもダメ社員で知られる浜崎伝助(西田敏行)であった。褒美に釣り休暇をもらった彼は、早速北海道に出かけることに。

 22作品目にして、とうとうファイナル。だが、これがパート13とか14でもまったく問題なさそうな、普段どおりのマンネリズムが展開する。もちろん最後だからスーさんの重大な決断などそれなりにイベントはあるが、余計なお涙頂戴に走らないあたりが潔い。

 これぞ偉大なるマンネリ。21年間も続いたというのに、最後まで馬鹿馬鹿しい笑いで突き進む。はずかしさで逃げ出したくなるみち子さんとの合体シーンもこれで見納めかと思うと、とてもさびしい。いや、そうでもないか。

 舞台は初の北海道ということで、イトウの大物を釣り上げようとハマちゃんスーさんが奮闘する。演じる二人が釣り嫌いというのは有名だが、そんな様子を微塵も見せないあたり、さすがはプロフェッショナルである。

 それにしても「釣りバカ日誌」を見て感じるのは、この世界観がもう、ギャグに世相を取り入れる事さえ難しいほど現実離れしてしまった事の切なさだ。

 鈴木建設のような会社は確かに以前は存在したが、今はどこかに消えてしまった。「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ~」と歌った植木等の無責任男が、すっかり古典になってしまったのと同じように、こちらもやがて「こういう良き時代があったよね」と懐かしく振り返られる運命なのだろう(どちらも抜群に笑えるが)。

 作品のパワーが落ち、DVDかテレビ放映を待てばいいや、というお客さんを取り戻せなかったのも残念。それでも最後となれば、なんとなく寂しい気もするのだが……。ともあれ、主演の二人には長い間お疲れ様、と言っておきたい。

前田有一

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