マーケティングの賜物のようなラブストーリー(70点)
皆さんは、韓国映画というものに何を求めているだろうか。私が思うに、「冬のソナタ」に始まる最近の韓流作品のファンの多くは、「ストレートになける悲恋ドラマ」、昔でいうメロドラマを求めているのではないかと予測する。
だとするならば、この「連理の枝」は最高のチョイスである。「連理の枝」は、まるで東アジア各国の韓流ファン10万人にアンケートを取り、好きなキャスト、好きな演出方法、好きなストーリー展開、すきなBGMの統計をとって、それを貼り合わせたような作品だからだ。
物語は単純明快。(女性客が感情移入しやすい)いかにも平凡な女主人公が、イケメンの男と偶然に出会い、恋に落ちるというもの。男は例によって大金持ちの社長。女は庶民でルックスも普通だが、不治の病という最強の金看板を持っている。脚本を書いている人も、書きながら苦笑していたのではないかと思うほどの、韓国製恋愛映画王道のパターンだ。
男は健康診断のため病院にやってきたということで、話の舞台は病院。彼らカップルは医者の目を盗んでデートに出かける。時にはお互いの友達同士もつれて、いっしょに飲んだりするが、案の定、その後その友達同士も恋に落ちる。また、二人を診察している医者と看護婦も、やっぱり恋に落ちる。
ヒロインがなぜ病院にいるのかは、なかなか明らかにならないが、観客は最初の数分から、「ああ、不治の病だね」と気づくだろう。一応、衝撃の事実として途中で明らかになるのだが、わかりやすすぎて、こんなものはネタバレにもなるまい。
「連理の枝」を見ると、韓国では風邪のように、不治の病が流行っていることがよくわかる。そして、その病にかかると、不思議と金持ちに出会いやすくなり、さらにモテるようになるらしい。
ヒロインを演じるのは、「冬のソナタ」でヨンさまの相手役をつとめ、最近では日本のテレビドラマ「輪舞曲(ロンド)」で竹野内豊と競演したチェ・ジウ。きれいな肌と長身、泣き顔のかわいらしさが魅力の涙の女王である。
この、いわゆるジウ姫は、こと観客の共感を集めるという点においては、天性の才能をもっており、恋愛映画のヒロインとしては、韓国映画界のどこを見渡しても、彼女以上にハマる人はいない。「連理の枝」は、彼女のおかげで作品としての魅力を4割くらいはパワーアップさせてもらっているといっても過言ではない。
期待の「泣き演技」も存分に見られる。まるで荒川静香のイナバウアーのように、そこに見せ場のスポットを当てればいいのだから、監督も楽である。チェ・ジウには、50歳になってもこういう役をやってほしい。
登場人物がイジイジウジウジしているあたりも、韓国のラブストーリーらしくて味わい深い。前半たっぷりドタバタコメディを見せて、後半に大変身、お涙頂戴の悲劇になるあたりの小回りの良さも高く評価したい。
これぞまさしくキング・オブ・メロドラマ。世界に冠たる韓国ムービーの魅力である。好き嫌いは分かれるが、いくらなんでもそろそろ日本の観客も、自分がこういうものを好きかどうか、判断できているころだろう。「私の求めていたものだわ!」と感じた方は、安心して劇場に向かってほしい。そこにはきっと、あなたの求めているものがある。
(前田有一)