花と蛇3 - 福本次郎

◆自由を奪われたもどかしさと裸であられもない姿をさらす恥ずかしさに打ちひしがれながらも、いつしかその愉悦にヒロインの意識はとろけていく。それは抑圧していた自我の発見、本能に忠実に生きる人間の満ち足りた表情が美しい。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 拉致され、監禁され、縛られ、吊るされ、人目にさらされる。それは女の胸の奥深くに潜む快楽を求める部分を道徳や羞恥心から解放するための儀式。自由を奪われたもどかしさと裸であられもない姿をさらす恥ずかしさに打ちひしがれながらも、いつしかその愉悦に彼女の意識はとろけていく。「やめて」と言っている唇が「やめないで」と口走りことでヒロインは本当の自分に目覚めるのだ。それは抑圧していた自我の発見、本能に忠実に生きる人間の満ち足りた表情が美しい。

 チェロ奏者の静子は少女時代からのパトロンだった夫の死後、莫大な借金のカタに遠山という男のものになる。遠山は山奥の別荘に静子を軟禁し、鬼源という男の元で理想の女に調教されていく。手始めに裸にされた静子は利尿剤を飲まされて失禁する。

 静子を演じる小向美奈子の肉体が素晴らしい。シェイプアップされた筋肉質なボディではなく、全体に少し余計に皮下脂肪がついた緩んだ体。彼女の柔肌に鬼源が手にする荒縄が食い込み、少し垂れ気味の巨乳が結び目からはみ出して大きく揺れる。最初は手首だけなのが、徐々に胸やふとももに緊縛が及ぶうちに静子が快感に打ちひしがれていく過程が息をのむほどにエロチックだ。

 やがて遠山の求める女になった静子は積極的に遠山を受け入れ、その身を彼にゆだねていく。しかし、悦楽を求める体は遠山に支配されていても、理性では恩人でもある元夫を死に追いやった遠山を憎んでいる。己の欲望を満たしつつ、復讐を遂げる策略。その後、奪われた会社を奪い返すだけでなく、鬼源とは引き続き関係を保っている。さまざまなポーズや体位で天井から吊るされる彼女のしどけない姿態はある種の様式美を放ち、愛でられるばかりの花という存在だった静子が、舌なめずりをしながら狡猾に獲物を狙う蛇に変貌していく様子が、なにより女という生き物の恐るべき深層心理を表現していた。

福本次郎

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