真夏のオリオン - 前田有一

ロマンチック戦争ムービー(60点)

真夏のオリオン

© 2009「真夏のオリオン」パートナーズ

 『真夏のオリオン』は、戦後ニッポンらしく反戦イデオロギーの人ばかり出てくるが、なかなか力の入った潜水艦ムービーである。

 第二次大戦末期、米軍の本土上陸を防ぐため、日本海軍は最後の防衛線として残存する潜水艦を沖縄沖に展開していた。艦長・倉本(玉木宏)のもと、意気盛んなイ-77号クルーも、数々の修羅場を潜り抜け、いまだ健在であった。やがて彼らは、米海軍の誇る歴戦の勇士マイク・スチュワート率いる駆逐艦パーシバルと遭遇。双方一歩も引かぬ、壮絶な戦いが開始された。

 50年もたって、潜水艦映画の金字塔『眼下の敵』(57年、米)の後追いをやっているというのも切ない話だが、一応最新映画だから戦闘シーンはこなれていて、それなりに盛り上がる。

 とはいえ、演じる役者の髪型まで最新スタイルだから、軍マニアおよび保守的な映画ファンの失望と怒りを買うことは間違いない。人気俳優はスケジュールを押さえるだけで精一杯、役作りのため髪を切れとまで言えない制作側の苦しい事情が垣間見えるようだ。

 だが、そういうトコロをこだわらないなら、テレビの2時間スペシャルとどこが違うのだろう。

 ──ということで、本作を本格戦争映画としてみることはオススメしない。ここで起きているのは、第二次大戦ではなく、別の何かという事にしよう。あえて名づけるなら、ロマンチックせんそうとでも呼ぶべきか。だから、オリオン座を眺めて平和を願うやさしい軍人たちの、友情ドラマにもなっている。

 このように思っておけば、海中に潜む敵艦長の「平和人権重視思想」を、老練な米軍人がなぜかたいした根拠も無いまま読み取ってしまうといった、強烈なご都合主義も許せるというもの。

 なにしろここで起きているのはロマンチック戦争。この世界では、一般的な用語としてのせんそうとは殺し合いと同義であるから、軍人が延々と平和演説をする場面もあったりする。敵のアメリカ人も気持ちのいい奴らばかりだ。決してバカっぽいなどと思ってはいけない。

 そんなわけで、そのあたりを許せるならば、キモである潜水艦バトルはそこそこ良くできているので、本作を見る価値はある。なお、エンドロールの途中に一番いいシーンがあるという不親切設計なので、くれぐれも途中で席を立たぬよう。

前田有一

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