鉄火肌で粋なお栄に杏が命を吹き込む!(点数 95点)
(C)2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
浮世絵師・葛飾北斎の名は、美術に疎い私でも知っていますが、彼の娘・お栄も、浮世絵師だったというのは恥ずかしながら、知りませんでした。
浮世絵師・お栄(声:杏)は、23才。父であり、絵の師匠でもある葛飾北斎(声:松重豊)と絵を描いて暮らしています。
掃除もしない、炊事もしない、ゴミも捨てない。住めなくなったら引っ越せばいいという雑然とした家は、まるで合宿所です。
居候の絵師・善次郎(声:濱田岳)が酔っ払って連れてきた絵師の国直(声:高良健吾)と飲んだり、離れて暮らす妹・お猶(清水詩音)と出
かけたりしながら、絵師として精進しています。
恋に不器用なため、絵に色気がないと言われ、落ちこんだりもしますが、日々、両国橋や吉原、火事、妖怪騒ぎなどを楽しんでいます。
監督は、『河童のクゥと夏休み』や『クレヨンしんちゃん』シリーズなど、大人も泣けるアニメーション作家として評価の高い原恵一。
自身が敬愛してやまない杉浦日向子の『百日紅』を初の長篇映画化しました。
若くしてこの世を去った彼女が20代後半に描いた本作は、発表から30年あまり経った現在もなお、傑作として多くの人に愛されています。
お栄が素晴らしいです。目の見えない妹を大切にし、死と向き合う強さをもちながら、不器用でうまく恋心を伝えられません。
だけど、絵に対しては、人一倍真摯に向き合っています。
タイトルになっている百日紅は、わさわさと散り、もりもりと咲くという「お祭り」状態が梅雨明けから秋まで100日も続くのだとか。
長い長い祭りなのです。
江戸時代にタイムスリップして、お栄と一緒に飲んで騒いで、わくわくドキドキ。長い祭りが体験できます。
もちろん楽しいことばかりではありません。
心が壊れてしまうほどつらいこともあります。
だけど、毎日、懸命に生きていれば、すてきなこともたくさん起こるハズ。
忙しい日々にちょっと疲れちゃった方に特にオススメです。
見終わったら、明日も頑張れそうな気分になれるかも。
(小泉 浩子)