吉野紗香がすべて脱ぐ(40点)
ハードボイルド作家白川道(しらかわとおる)のギャンブル小説『病葉流れて』は、賭け麻雀の世界にはまりこむ若者を生々しく描き、青春小説の側面からも好評を得た。本作はその映画化。
学園紛争華やかりしころ、大学生の梨田雅之(村上淳)は、四浪二留で、同じ学生とは思えぬ虚無的なムードを持つ永田一成(田中哲司)に強く興味を持つ。彼に近づいた梨田が見たのは、マージャン博打の世界。その危なげな空気を吸いたくて、彼は徐々にのめりこんでいく。そしてその最中に出会った、喫茶店で働くテコ(吉野紗香)とも、やがて惹かれ合っていく。
バクチと女、どちらも破滅の香り漂う魅力的な娯楽……いや人によっては生きるすべてだが、そこに足をすくわれる若者の姿が妙にリアル。といっても、そう感じるのはオジサン世代だけで、今時の本物のワカモノはそうしたものに興味を持つ暇もないのが実情かもしれない。実際、その二つを知らずとも、人生を楽しく生きることは出来る。
さて、この映画版の良い点は、バクチの世界に漂う雰囲気、期待や怒り、あるいはあきらめやいらだち、そういったものがごた混ぜになった退廃的かつ感情的な空気感をよく表現できていること。逆によくないのは、マージャンというゲームの魅力、駆け引きの面白さやスリルといったものが伝わらない点。
吉野紗香は、ちょっとフシギ系なヒロイン役を堅実な演技でこなしている。かつてのチャイドルも立派な女優に成長した。
関係方面で話題騒然の濡れ場では、長まわしの編集なしという、逃げも隠れもせぬ正面がっぷり四つの組み手で、初ヌードを披露する。布団を引っ張り出す場面から服を一枚一枚脱いでいくところまで、ファンはまばたきをする暇がないだろう。くれぐれも保護用の目薬をお忘れなく。
このシークエンスで特筆すべきは、彼女の意外なまでにデカい胸ではなく、相手役・村上淳との絡みの中でも、自分を失わずきっちり演じたその冷静さにある。とくに男の下着を脱がせた直後、視線をチラと下にやって相手の"状態"を確認する仕草。このセックスは愛の交歓ではなく、ヒロイン曰く「相手を知るため」の行為であることを考えると、このわずかな視線の動きは物凄い演出・演技である。
ただし、ほんのコンマ何秒かの表情だから、くれぐれもお見逃しなく。とくに男性の皆さんは、吉野紗香の巨乳ばかりでなく、カオにも注目と覚えておいてほしい。
(前田有一)