◆超ハードな悪趣味テイストを発揮させた演出が大きな魅力(80点)
北米で和製バイオレンス系アクション作品を輸入しているビデオメーカー“メディア・ブラスターズ”が、井口昇監督を迎えて製作したB級バイオレンスアクション作品で、“TOKYO SHOCK”と称されるアメリカ出資の日本映画の記念すべき第一弾作品。
バスケットボールが得意な今時の女子高生・日向アミ(八代みなせ)は両親を亡くし、弟のユウ(川村亮介)とごく普通の生活を送っていた。ある日、壮絶ないじめに遭っていたユウは、友人の杉原タケシ(秀平)とともにいじめ連中の手によって高所から飛び降り自殺に見せかけて殺害される。怒りが頂点に達したアミは、ユウのノートに記載されている“殺したいヤツのリスト”から服部半蔵の血を引く暴力団組長・木村龍二(島津健太郎)の息子・翔(西原信弘)が主犯格であることを割り出す。翔の家に向かったアミは、龍二と妻・スミレ(穂花)と多数の部下たちに捕らえられ、残酷極まりない拷問を喰らいに喰らった挙句に片腕を失ってしまう……。
かつてはゲテモノ系AVを撮っていた井口監督によるスプラッター描写を全面に押し出して、超ハードな悪趣味テイストを発揮させた演出が大きな魅力だと言える。冒頭から血飛沫が飛び散りまくり、ほとんどのシーンが血まみれ大流血の血生臭い残酷描写がてんこ盛りなのである。
とにかく荒唐無稽な作風は、漫画チックでケレン味がたっぷりな点が面白い。明らかにクエンティン・タランティーノ監督作品、タランティーノとロバート・ロドリゲス監督の『グラインドハウス』をモロに意識しているようにも思える。アミの片腕マシンガンとタケシの母・ミキ(亜紗美)の片脚チェーンソーは、ロドリゲス監督作品『プラネット・テラーINグラインドハウス』を彷彿させ、女性主人公が復讐に挑む姿はタランティーノ監督作品『キルビル』二部作と同じである。さらに外国映画でありがちな間違った日本のイメージが取り入れられている。これが面白さをパワーアップさせると同時にB級感覚とマニアック感覚を醸成させている。
本作の面白さは血まみれやアクションだけではない。アミの片腕天ぷら、翔に対してヘマをやらかした板前のエンコ(指)巻き寿司、スミレのドリラー式ブラと言ったユニークな珍ネタの存在も忘れられない。これらは、一度観ると忘れられないほどの強烈なインパクトを与えてくれるのである。このように観る者を飽きさせないような工夫を施した魅せ方は大いに認めたい。
娯楽に徹底し、B級及び悪趣味テイストをとことん追求した結果、狂気に満ち溢れてしまった作風となった本作。97分という上映時間は、この手の作品には適しているとも言える。グロテスクな残酷描写が大の苦手という方には最初からオススメしないが、B級映画マニア、アクション映画ファン、スプラッター系ホラー映画ファンの男性方には思いきってオススメしたい。
勢いを失い、本当に面白いと思えるような娯楽映画を作れなくなった現在の日本映画界は、本作を見習うべきだと私は言いたい。なぜなら、本作には60年代から70年代の情熱的で本当に面白いと思える娯楽映画と同じ匂いを感じられるからである。
本作公開から約二ヵ月後に公開された“TOKYO SHOCK”シリーズ第二弾『東京残酷警察』は、本作で特殊造型を務めた西村喜廣が監督をはじめ一人八役を担当し、本作を超える程の大流血、クレイジーぶりを発揮させることに成功したのである。
(佐々木貴之)