◆救いようがなさすぎる話なので、芸術面を誉めて逃げたくなる(20点)
4ヶ月の延命と引き換えに、同胞をガス室送りにする作業に従事したユダヤ人 ”ゾンダー・コマンド” の物語。
俳優一家アークエット家の次男坊デイビッドや、個性派俳優スティーブ・ブシェミ、ミラ・ソルヴィーノなどが出演するユダヤ人迫害ものだが、この手の題材はホントに尽きる事が無いなと感心する。
今回は、「ユダヤ人がユダヤ人を虐殺する実行犯になっていたという事」と、「強制収容所でも、実はユダヤ人による反乱が起こっていたという事」と、「ガス室処刑で、時折生存者がいた事」が、この映画を見ると、わかるようになっている。
しかし、戦後何十年たっても、ナチスものというのは定期的に作られている。そちら方面からの製作要請でもあるのだろうかと、思わず疑いたくなるほどである。ヨーロッパにはこの種の作品の根強いマーケットがあるから、製作費が集まりやすいということなのだろうが、一歩間違うと政治的な宣伝臭さを感じてしまうジャンルだから、作る人たちも大変だろうと思う。
この映画も、他の例に漏れず常時ドス暗い色調で重苦しく、ストーリーも残酷。まったく救いが無く、見終わると気分はどんよりと沈む。
しかし、ただひたすら「ユダヤ人は、こんなひどい事もさせられてました」というだけの話を見せられるのも、なかなかつらい。生きるために非道なことをしてしまった、という彼らの葛藤は十分伝わってくるが、それを映画で伝える事にどれほどの意味があるのかとも思う。
(前田有一)