アイデアはいいが、ジジ臭いセンスがよくない(35点)
今週は日本映画の公開が多い。この『死に花』は、老人施設で暮らす老人たちが、ある銀行の地下金庫を盗み出す計画を実行するまでを、コミカルに描いた娯楽作だ。ジジイたちが、若者も真っ青な行動力と長年の経験で、トンデモな計画を着々と成功させていくあたりが痛快で、老人エンタテイメントとでもいうべき面白いジャンルの作品となっている。
ただ、老人賛歌のテーマやストーリー、こうしたアイデアは実に良いと思うのだが、問題は映画作りのセンスだ。『死に花』の音楽やセリフのセンスは、少々ジジくさい。若い人がみると、その辺が鼻につく可能性があるだろう。
かといって、年齢層高めの人々になら薦められるかというと、それもどうだろう。この映画は、まるで老人ホーム側が企画したお楽しみ会的なムードで、あまりに毒がない。なんだか、年寄りの気持ちも考えずに「おじいちゃん、いけませんよー」と子供言葉で話し掛ける看護婦をみているような、寒々しい気持ちになってしまう。当の老人たちがみたら、劇中の老人たちのあまりの子供っぽさに、なおさら白けてしまうのではないか。私としては、もっと渋く、カッコいいジジイたちの活劇を見てみたかったが。
また、序盤の30分間に無駄が多い。こうした作品はテンポを失うと一気に魅力を失う。上映時間も2時間になってしまったが、もっとコンパクトにしたら良くなったと思う。結局『死に花』は、“老人エンタテイメント”なるアイデアはよかったが、料理の仕方に不満が残る。それでも妙に過剰な健全さの漂うこの雰囲気が許せるという方なら、まあまあいけると思う。
(前田有一)