武士道シックスティーン - 小梶勝男

◆成海璃子と北乃きいの若手実力派2人が繰り広げる女子剣道の世界。他人と真っ直ぐに向き合い、ぶつかり合うことの大切さを描いた青春映画の佳作(78点)

 ネット社会は一見、それまでより人と人とを簡単に結びつけるようになったと思える。だが実は、自分に都合のいいときに、都合のいい相手を見つけて、つながっていると思っているだけなのかも知れない。それはどこまで行っても自分が一方的に拡大しているだけで、他人と「関わっている」とは言えないのではないか。男女間の体の売り買いが恋愛とは違うようなものだ。友達、あるいは恋人同士で一緒にいても、お互いに向き合わず、自分の携帯ばかりを見ている人たちが増えている気がする。ネット社会は逆に、人と人との関係性を希薄にしている部分があるようにも思う。

 本作の女子高校生たちは、実に美しく、真っ直ぐに向き合っている。その美しさが弁証法となって、映画そのものを引っ張っている。

 剣道の中学チャンピオンで負け知らずの磯山(成海璃子)は、ある大会で「甲本」という無名の選手(北乃きい)に負けてしまう。磯山は「甲本」を追って同じ高校に進学するが、宿敵だと思っていた相手は、両親の離婚で「西荻」と名前が変わっていた。剣道も逃げてばかり。磯山は西荻を鍛えて、本当の力を引き出そうとする。

 2人の少女は、どこまでも対照的だ。磯山には母親が、西荻には父親が家庭にいない。勝つことが全ての磯山と、勝ち負けにこだわらず剣道を楽しむことがモットーの西荻。2人はお互いに「足りない部分」を補完し合って成長していく。その過程で、磯山は自分の中に弱さを、西荻は強さを見つける。ここに描かれているのは、理想的な友情関係であり、ライバル関係だ。

 磯山は般若の絵が入った竹刀袋を持ち、昼食は座禅を組みながら巨大な塩おにぎりにかじりつく。昼休みは鉄アレイ片手に宮本武蔵の「五輪書」を読む。それを見て、西荻は「リアル武蔵だ」と憧れる。「剛」と「柔」。極端な2人を、成海と北乃という若手の実力派がときにコミカルに、ときに情熱的に、生き生きと演じているのが、見ていてとても楽しい。

 特に若い時代はそうだが、人は自分だけでは成長できない。他人とぶつかって初めて、新しい世界が見えてくるものだ。「ロボコン」でも瑞々しい青春を描いた古厩智之監督の目線は全くぶれない。2人に対し、常に等間隔だ。剣道の場面に象徴されるように、対峙した形で、シンメトリーに描かれる。そして、物語は少しも寄り道することなく、真っ直ぐに2人を追う。それがとても清々しい。

 ラスト、2人は「巌流島」に見立てた丘の上で、武蔵と小次郎となって対決する。その場面には、他人と真っ直ぐに向き合い、ぶつかり合うことの喜びが、見事に表現されている。ネット社会に生きる我々が忘れがちなものを思い出させてくれる、青春映画の佳作と言えるだろう。

小梶勝男

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