心理描写がいかにも回りくどく要領を得なかった。(点数 40点)
(C) 2011「東京公園」製作委員会
血のつながらない姉、幼なじみの娘、ベビーカーを押す母親……。い
まだに将来の行き先を決めきれずにいる大学生が、彼女たちとの関わ
り合いの中で本当に己の人生に必要なものは何かを問いかけていく。
ところが、あまりにも曖昧で思わせぶりなシーンの連続は、答えなど
ないことをごまかすための手段にしか見えない。若い登場人物たちは
それぞれに“死”を身近に感じてはいる。だがその影が実生活に深い
影響を与えているわけではなく、生きている者同士で慣れ合っている
にすぎない。
公園で家族写真を撮影している光司は、初島という男からある母子の
散歩姿の隠し取りを頼まれ、母子を追ううちに、光司は姉の美咲の思
いに気づく。一方、幼なじみの富永が事あるごとに光司に絡んでくる。
初島と母子の関係、美咲と富永の間で揺れ動く気持ち、同居している
親友とのやりとり。大学の卒業を間近にして、カメラマンとして一歩
踏み出すのか、夢を諦めて現実を直視するのか、本来なら光司は真剣
に未来を模索していなければならないのに、母子の写真を撮るうちに、
日常のどこかに違和感を覚えていく。
お互い両親の連れ子だった義理の姉・美咲が自分を愛しているのでは
という疑惑。近すぎて見えなかった相手の心、それを富永に指摘され
て光司もまた美咲をある種の理想にしていたのが明らかになる。しか
し、そのあたりの心理描写がいかにも回りくどく要領を得なかった。
(福本次郎)