◆周囲の目を気にしながら生きるエスパーたちのつつましさがほほえましい。透視や電磁波、念動力に時間凍結、そんなパワーを持ちながらせこい用途にしか応用できない彼らの現実が、超能力に対する偏見をリアルに反映している。(40点)
特殊な力を持っているのに、大っぴらに発揮するととんでもない災難が降りかかることが分かっている。そんな、周囲の目を気にしているエスパーたちのつつましさがほほえましい。透視や電磁波、念動力に時間凍結、パワーを自販機の懸賞やうどんに入った髪の毛を取るといったせこい用途にしか応用できない彼らの現実が、超能力に対する偏見をリアルに反映している。世間の好奇心と能力を利用しようとする権力者、ひっそりと生きていたい彼らにはいちばんの天敵なのだ。
超能力検証番組のAD・米は日本中のエスパーを探す旅に出る。ある日、自称超能力者と怪しげな喫茶店で待ち合わせた米はその低能ぶりに落胆するが、そこにいたテレパシー能力者に心を読まれてしまう。
舞台を原作にしているだけに、限られた空間と間合いの詰まった会話で物語はテンポよく進んでいく。エスパーたちの敵である米が実は誰よりも超常現象を信じていて、自分たちの理解者であると判明した時から米に対する警戒を解く。彼らに出会う前に米は散々インチキ超能力者に騙されてきて、やはり超能力など存在しないと思い始めている。彼女の純粋な気持ちを叶えてやろうとエスパーたちは一肌脱ぐが、それがサンタを空に飛ばす田舎芝居なのには脱力してしまう。あえてしょぼい演出でここに集まった超能力者たちの手づくり感を出そうとしているが、米の夢を壊さないという意図ならばもう少しロマンチックにしてもよかったのではないだろうか。
エスパー喫茶内の出来事だけでは空間的な広がりがないので米のエピソードに多く時間を割いているが、ストーリーのヤマとなるハラハラドキドキするような設定がないので、内容の薄さが露呈してしまった。あと、超能力とUFOを同じ「超常現象」としてひとくくりにするのはいかがなものか。超能力はあくまで人間がもつ能力、UFOは仮に存在するとしても宇宙人の乗り物。根本的にその成り立ちが違うはずだが。。。
(福本次郎)