終始ヒョクチンのバツの悪さがスクリーンからにじみ出し、その場に居心地の悪そうな彼に思わず手を差し伸べたくなった。 (点数 70点)
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明るいうちから酒を飲んでもロクなことはない。暇つぶしに飲み、嫌
な記憶を忘れようと飲み、感傷に浸るために飲み、勧められて断り切
れずに飲む。一方で酩酊状態のおかげで不運な出来事にあってもそれ
ほど腹も立たず、なんとなく酒のせいにすれば己を納得させられる。
主人公は結構悲惨な目に遭っているが、そのまろやかな銘酒のような
味わいを残す映像は、観客までもどこか夢見心地にさせてくれる。
恋人にフラれたヒョクチンは友人たちにチョンソンに誘われるが、ド
タキャンされひとりうらぶれた田舎町をぶらつく。友人が手配したペ
ンションにつくと、無愛想なオッサンが管理人をしていた。
ペンションはケータイが圏外の辺鄙なところで、近所に雑貨屋がある
だけ。酒を飲みテレビを見る以外に何もすることがない。昼間言葉を
交わした隣室の女と一緒に飲もうとワインを持って部屋を訪ねると男
が出てきたり、2時間に1本のバスも女のせいで逃したりと、ヒョクチ
ンにはまったくツイていない。冬のビーチでカップ麺をすすりながら
焼酎を口にするシーンの自虐的なトホホ感が、ヒョクチンのおかれた
現状と彼の気持ちを象徴していた。
その、自分では経験したくないが、他人ならば笑ってしまうような酒
の上での失敗の数々が、絶妙のさじ加減で見る者の腹をくすぐる。終
始ヒョクチンのバツの悪さがスクリーンからにじみ出し、その場に居
心地の悪そうな彼に思わず手を差し伸べたくなった。
(福本次郎)