怖い! 面白い! 今度はホラーだ(75点)
ゴールデンウィーク向けの映画が続々公開されているなか、子供向けアニメの本命『クレヨンしんちゃん』も新作が登場する。
最近カスカベの街では、妙なうわさが広まっている。ある日突然、隣人が「そっくり人間」に取って代わられ、本物はどこかに連れ去られてしまうというのだ。最初は信じなかった子供たちも、家族や幼稚園の先生たちが、急に性格が豹変するのを見ると……。
なんと今回のクレしん映画は、ホラーである。まったくもって異色だが、これがまた本当に怖いのだからたまらない。たぶん、小さい子供が見たら泣く。なにしろあのふにゃふにゃした絵柄と世界観の中で恐怖シーンが描かれるのだ。私などは昔、「ドラえもんが、突然血を流して死んだら一番怖い映画になる」などと、くだらん妄想を話し合ったものだが、それが現実になってしまった。
しかし、完全にホラー一色というわけではなく、基本的にはいつものお笑いドラマ。時折怖いシーンが入るという感じだ。オチのバカバカしさもクレしんらしい。泣いた子供たちも最後は安心して帰路につけるよう、配慮されている。
映画版にはオリジナルキャラクターが出てくるが、今回は、そっくり人間に侵略されつつあるカスカベ最後の砦となるしんちゃんとそのお友達軍団に味方する、ジャクリーン・フィーニー特捜官(渡辺明乃)が秀逸。登場シーンではジャージの胸に「ツンデレ」と書いてある。そのまんまな性格設定が笑いを誘う。
ギャグのキレもまあまあで、ホラーという新鮮さもあり、大人でも楽しめる。なお、しんちゃんのお父さんであるひろしが、会社で背中を丸めて袋とじを定規で切っているような、何気ない小ネタが私は好きだ。
(前田有一)