「初期のカラー映画の色彩の感覚を再現」しているらしいが、暗過ぎて見づらいようでは本末転倒ではないか。。。(点数 40点)
(C)2009Rai Cinema-Offside-Celluloid Dreamas
彼の気高い理想と行動力に魅せられた。運命の人だと信じてすべてを
捧げた。だが、彼は指導者になった途端、彼女との過去を封印した。
後に独裁者となる男を誰よりも愛し、誰よりも憎んだ女は、当局によ
ってあらゆる記録を消され、最愛の息子とも隔離されてしまう。映画
は、社会主義の隆盛から第一次世界大戦、独裁政治、教会との和解、
そして破滅へと向かうイタリアの歴史を背景に、悲劇のヒロインの人
生を通じて人間性が抑圧されていく過程を描く。
弾圧から逃れるムッソリーニを匿ったイーダ。ふたりは激しい恋に落
ち、イーダは全財産をムッソリーニの新聞社設立のために差し出す。
その後イーダは出産するが、ムッソリーニは次第にイーダを遠ざける。
ヴェルディやプッチーニのオペラから未来派アート、ファッション、
ニュースフィルムまでをふんだんに盛り込んで当時の空気を濃密に封
じ込めた映像は圧倒的な迫力を生む。さらに過剰なまでに説明的な音
楽が平和とは程遠い激動の時代を表現しようとする。
その一方で薄暗い夜や室内のシーンが多く、ほとんどのカットで俳優
の顔に照明が当たらないため表情が読み取りづらいのはどうしたこと
か。昼間の場面ですらなぜか背後からのライティングは、あえて暴走
気味のイーダの感情を抑えようとしているのだろうか。「初期のカラ
ー映画の色彩の感覚を再現」しているらしいが、暗過ぎて見づらいよ
うでは本末転倒ではないか。。。
(福本次郎)