仕事にも恋愛にも全力投球!アラサー女子の頑張りに元気をもらえるサプリメント・ムービー(75点)
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戦争・暴力・殺人をテーマにした映画が溢れかえる昨今、感動したり考えさせられたり悩んだり、苛立ったりもします……。
厳しい現実社会から、一瞬でも夢を見たい時だからこそ琴線に触れる、リニューアルされた渋谷○9を装ったような(笑)軽妙・洒脱なブランド映画です 。
ニュージャージーのテレビ局にリストラされ、職探し中のベッキー(レイチェル・マクアダム)が、ようやくニューヨークのキー局IBSに採用されます。彼女が任されたのは、低視聴率で喘ぐ朝の情報番組「DAYBREAK」のプロデューサーでした。
が、しかし・・・テレビ局の現場はとんでもない輩たちの巣窟で、スタッフの意見調整すら苛酷・壮絶で、悶絶の毎日を送ることになるのです。そんなある日、イケメン先輩プロデューサーのアダム(パトリック・ウィルソン)と出会い恋におちる予定のベッキーでした……。
というお話は都会派コメディとしては水準を超え、『プラダを着た悪魔』のアライン・ブロッシュ・マッケンナの脚本が気持ちの良いリズムとなり、ロジャー・ミッシェルの演出も軽快。
ニューヨークの風景ショットを効果的に挿入して、情緒的な味をかもしだします。
本作の肝は、主人公ベッキーを迎え撃つ大御所二人の存在でしょう。
番組「DAYBREAK」のメインキャスターは、「お局」の元ミスコン女王を鼻にかけるダイアン・キートン。
コメディエンヌとしては、ご存知『アニー・ホール』のタイトルロールを演じたうまさは健在です。被り物だろうがドッキリだろうが、なんでもこなし、お笑い芸人よろしく「視聴率のためになら、なんでもやっちゃうよぉ~」という美味しすぎる儲け役。
そして白眉は、ピューリッツァー賞にも輝いたという伝説のキャスターで、世界で三番目に嫌な奴と業界内で陰口をたたかれるマイクを演じるハリソン・フォード!
「どうしてこの役を引き受けたの?インディ・ジョーンズ。どうしたハン・ソロ」と戸惑うも、『ワーキングガール』や『サブリナ』があったではないですか。そうでした。ハリソン・フォードの隠されたアタリ役と言ってもいいですね。プライドの塊が逆に笑いを誘う本作のマイク役は絶妙です。
軽いタッチながら、テレビドラマ化すればワンクールの尺になりそうなストーリーを、この時間にまとめた編集も冴えている本作は、ソフィスケイテッドな『或る夜の出来事』(1934年)の曾孫、『ローマの休日』(1953年)の孫。
そして、ラブコメの『マンハッタン』(1979年)、『恋人たちの予感』(1989年)や、サクセスストーリー『摩天楼はバラ色に』(1986年)の娘。『ノッティングヒルの恋人』(1999年)や『プラダを着た悪魔』(2006年)の妹のような映画です。
ぜひぜひ、女子会やデートムービーに♪ 私のように男子一人での観賞にもこっそりとオススメしたい気分爽快で、鑑賞後にワインで乾杯したくなるような映画です(微笑)。
■2010年 アメリカ映画/上映時間:107分/監督:ロジャー・ミッシェル/出演レイチェル・マクアダムス、ダイアン・キートン、ハリソン・フォード、パトリック・ウィルソン
(中野 豊)