◆完全な大人向けのラブ・コメディー(70点)
人気ベーカリーを経営するジェーン(メリル・ストリープ)は十年前にスゴ腕弁護士ジェイク(アレック・ボールドウィン)と離婚したが、三人の子供を立派に育て上げ、仕事とプライベートに関しては満足しているが、心の中では何か物足りない。そんなジェーンは、息子の大学卒業式に出席するために滞在したニューヨークのホテルのバーでジェイクと再会する。ジェイクは、かなり若い小娘と再婚していた。久々に二人でディナーを満喫し、その後は久々の肉体関係を築いてしまう。一方でジェーンはバツイチの建築家アダム(スティーブ・マーティン)とも良い関係になっていた。
女流監督ナンシー・マイヤーズがメガホンをとった完全な大人向けのラブ・コメディー作品。邦題がベーカリーで主演がメリル・ストリープときたものだから、同じくメリル主演のグルメ系人間ドラマ『ジュリー&ジュリア』(09)のようにグルメ感覚を取り入れたラブ・コメディーでパンを作るシーンを随所に描いて美味しそうなパンがいっぱい出てくるのかと思いきや、パン屋は殆どと言っても良いほど関係ない上にパン作りのシーンはごく僅か、美味しそうなパンは出てくるが控えめという感じなのである。
何よりも印象深いことは、露骨な下ネタだ。序盤ではジェーンが女友達数名と下ネタトーク、次にジェーンとジェイクのラブシーン、挙句の果てには全裸のジェイクがトンデモナイことを……という具合に結構ヤリ過ぎている。それでも、下ネタは笑えるギャグという感じだから、素直に面白いと認めても良い。中でも全裸になったジェイクは、最後の最後に用意されたメインディッシュ的な下ネタであり、まさに止めを刺すかのようにしっかりと笑わせてくれる。これによって本作は、おバカ映画路線に一歩だけ足を踏み入れてしまったのである。それにしても女性の監督がよくここまでやってくれたものだとヘンに感心させられてしまった。
メリルは『マンマ・ミーア!』(08)、『ジュリー&ジュリア』、そして本作でもハジけたキャラを好演しているが、本作ではマリファナまでやってしまっているのだからスゴいとしか言いようがない。メリルは、このままハジけキャラを演じ続けていくのだろうか?!
一方、アレック・ボールドウィンのやり過ぎたキャラクターも面白くてインパクトが強い。それにしてもコメディー専門のディーン・マーティンが良い味を余り発揮できず、明らかにアレックに喰われてしまっているのである。ディーンのコメディアンらしさをしっかりと引き立てた方が良かったのでは?!
本作を観て美味しいクロワッサンを食べたくなるのか?! それとも、下ネタで満足させられてしまうのか?!
(佐々木貴之)