原発事故で汚染が広がっている日本の現状を鑑みると、不気味なリアリティを伴って見る者に迫ってくる。(点数 40点)
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ふとした瞬間に蘇る娘との思い出。微笑ましく懐かしいほど、喪失感
が浮き彫りにされる。娘を殺したヤツを絶対に見つけ出して復讐する。
いや、それ以上に離れていた時間、彼女が何を考え、誰と付き合い、
どんな暮らしをしていたかを知りたい。そんな、残された父親の心境
がリアルだ。映画は、ひとり娘を惨殺された刑事が捜査するうちに、
巨大な悪意が背後で糸を引いていることに気づいていく姿を描く。
【ネタバレ注意】
刑事・トムの家に賊が押し入り、帰宅していた娘・エマを射殺する。
トムはエマの遺品を整理中に、彼女が勤務先・ノースモア社の核疑
惑を環境保護団体を通じて告発しようとしていた事実をつかむ。
突然の吐き気と吐血、そして疲労感が抜けず徐々に蝕まれていく肉体。
放射線を浴び、放射線を浴びた食品を口にした者が内部から健康が損
なわれてゆっくりと死に至る様子は、決して丁寧な描写ではないが、
原発事故で汚染が広がっている日本の現状を鑑みると、不気味なリア
リティを伴って見る者に迫ってくる。
ところが物語は、根は悪党ではないが悪党に手を貸す者や善人だが恐
怖に打ち勝てない者が入り混じって、やたら複雑になる。せっかくメ
ル・ギブソンが帰って生きたのだから、もっとエピソードをすっきり
させスピーディな展開にしたほうがよかったのではないだろうか。結
局“真実に見せかけたウソだらけ”の言葉通り、何が真実だったのか
わからないままだった。
(福本次郎)