山形スクリーム - 山口拓朗

◆アンチ竹中派なら食あたり必至(55点)

 個性派俳優としての枠を超えて、現れる場所場所でマニアックな笑いをふりまく希代のエンターテイナー。初監督作品「無能の人」(91年)以来、監督としては叙情的な作品を撮り続けてきた竹中直人が、監督6作目にして初めて娯楽作品にチャレンジした。

 超映画通として知られる竹中が、持ち前の映画愛をたっぷりと注ぎ込んだ本作「山形スクリーム」は、そのほとんどのシーンで、竹中風味なギャグ&ユーモアが炸裂。「女子高生」と「ホラー」と「田舎」をお題にした予測不能な竹中劇場は、竹中ファンなら十分に満足できるだろうし、アンチ竹中派なら食あたり必至という、竹中ワールドど真ん中の"笑劇"作だ。

 あらすじは、山形県の御釈ヶ部村という僻地にやってきた美香代(成海璃子)ら女子高生が、800年の眠りから覚めた落ち武者の亡霊や、亡霊に襲われてゾンビ化した村人たちに追われる……というぶっ飛んだもの。特筆すべきは、ストーリー展開ウンヌンではなく、シーンごとにちりばめられた竹中御用達のギャグにほかならない。よくもまあ次々と「野暮」と呼ぶにふさわしい低センスな笑いをくり出せたものである。

 カメラアングル、役者の動き、セリフ、音楽、演出……等々で、竹中が愛する映画作品へのマニアックなオマージュが見られる。映画ファンが思わずニタニタするような見どころが満載だ(ゾンビはその象徴)。妙にポップな衣装や小道具を多数用いるなど、ビジュアル面でも特異な個性を打ち出している。

 竹中ワールド作りに精を出したキャスト一同には殊勲賞を差し上げたい。脇の脇にまで個性的な面々(役者、芸人、モデル、歌手ら)を起用したうえ、そんな彼らが、竹中監督張りのテンションで一世一代のバカ演技をしている点が痛快だ。30近い登場人物を竹中カラーに染めた手腕も並大抵ではないが、そのなかにおいて、埋没したキャラクターが少ないことにも驚かされる。

 作品の毛色が毛色だけに、上映開始後早々に退席する観客が出る可能性も捨てきれないが、ある意味、その突き抜け具合こそが、この映画の真骨頂だ。万人受けなど考えずに、スウィングしきった点については評価したい。鑑賞後に「竹中直人がますます嫌いになった」という方がいたら、それはそれで褒め言葉ということになるのだろう。

山口拓朗

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