小さな命が呼ぶとき - 渡まち子

小さな命が呼ぶとき

◆子供の命を救うという目的のため、数々の障害をクリアしていく主人公の現実主義に感服する(60点)

 いわゆる難病ものの実話だが、子供の命を救うという目的のため、数々の障害をクリアしていく主人公の現実主義に感服する。エリート・ビジネスマンのジョンには、筋力が低下していく難病・ポンペ病に冒された2人の幼い子供がいた。平均寿命9年といわれるこの病に治療薬はない。あきらめきれないジョンは、ポンペ病の権威のストーンヒル博士の研究に着目。やがて二人は共同で製薬会社を立ち上げるが、彼らの前には多くの困難が待ち受けていた…。

 難病の子供の治療薬がないと知ってもあきらめず、新薬を作ろうとするその姿は、同じく実話の映画化「ロレンツォのオイル/命の詩」を彷彿とさせる。ジョン・クラウリーのすごいところは、自分で薬こそ作らないものの、製薬会社を立ち上げた後の柔軟なスタンスにある。自分の待遇や経済的な不利益などいっさい目もくれず、薬の開発のためならどんな犠牲もいとわない。会社はすぐに大手製薬会社に買収され、そこでのジョンの待遇は博士の添え物というプライドを傷つけられるもの。だが、彼はその冷遇に耐えながら自分ができるプロモーションなどで上層部の意識改革をやってのける。ずっと一緒に頑張ってきた頑固者の博士と袂を分かつのも、なんとしても子供を救いたい一心だ。彼の懸命な思いが、頭は硬いが根は優しい博士に伝わったからこそ、起死回生のアイデアが生まれてくる。利益やメンツばかり優先する製薬会社の役員に見事な方法で“三行半”を叩きつける場面は、胸がすく思いだった。

 ジョンの行動には、ある意味、自分の子さえ助かればいいとのエゴイズムもあっただろう。だが、ジョンと博士の二人三脚の頑張りは、極めて極私的な目標が、結果として普遍的な利益へとつながる好例に思える。子供たちの明るい笑顔が印象的で、難病や車椅子生活にいじけることなく、かけっこしたりパーティを楽しんだり、生を謳歌している姿がいい。時に生意気なセリフを吐くところも逆に可愛い。絶対にあきらめず自分のことは自分でなんとかする“自立自助”こそが、アメリカ人の最も尊い精神だ。いい意味でアメリカらしい物語である。

渡まち子

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