定番スリラーとして及第点(70点)
いわずと知れた、人気テレビアニメの映画版。毎年作られている映画版も今年で10本目、10周年ということで、これまで映画版には出てこなかったキャラクターも総出演の、お祭り的な一本になっている。
ストーリーは、いつものコナンくん一同が、横浜のテーマパークにやってくるところから始まる。そこで毛利小五郎がある依頼を受ける間、子供たちは遊園地で楽しく遊んでくださいという趣向であったが、実は彼らの腕にはめられたフリーパスには爆弾が仕掛けられており、今夜までに毛利探偵とコナンがこの依頼を解決できなければ、皆殺しにするという罠であった。
そんなわけで、コナンくんと毛利探偵は、別行動で事件の謎に挑むのだが、そもそも事件が何なのかすら、依頼者からは教えてもらえない。唯一与えられたヒントは奇妙な記号のみ。ここから「どんな事件がおきたのか」をまず知り、そこから犯人など、真相をさらに暴かねばならない。このように、謎が2段構造になっているのが本作の特徴だ。
しかし、しょせんは子供アニメなので、謎解きのカタルシスを得るための「間」も与えられず、ポンポンとコナンが謎を解いていく。オチやトリックの方も、例によって子供だましなものである。
とはいえ、「テーマパークを一歩でも出ると腕のパスが爆発する」=「敷地外にレールが一部はみ出ている、売り物のジェットコースターに乗ると死ぬ」という約束が与えられたために、それなりのサスペンスが生み出されている。
テーマパーク側でこの事実を知っているのは、コナンから無線で知らされた灰原哀のみ。彼女の機転のみが、子供たちと引率の毛利蘭を救う命綱だ。
ジェットコースターに乗りたがる皆を引き止めるため、灰原がわざと仮病で倒れ、「そばにいて……」なんて可愛く演技するあたりは、なかなかの見所だ。演じる林原めぐみのツンデレ演技は、見逃せない「萌え」のポイントといえる。
一方、コナンは捜査の過程で、同じく人質をとられ、やむなく同じ事件の謎を追う高校生探偵服部平次らと出会い、協力して捜査を進めていく。このあたりもシリーズを通してのファンには喜ばしい展開だ。
コナンによる謎解きと、灰原による仲間の保護の2軸を並行して描くこの映画版は、定番のスリラーとして、そこそこの出来。少々詰め込みすぎなきらいはあるが、そこは10周年ということで、作者も突っ込まないでといっているので、まあ気にすまい。
(前田有一)