感覚は刺激しても決して感情や想像力にまで訴えてこなかった。(点数 40点)
凡庸と評されるのはクリエーターにとって屈辱以外のなにものでもな
い。だが、それを避けるためにあえて語らず解説せずただ茫洋とした
映像を投げ出すだけでは、誰も非凡とは認めないだろう。メタファー
が暗示する主人公のおかれた状況と象徴が明示する彼の心理状態は何
とか理解できるものの、恐ろしく断片的なシーンの連続はエピソード
として成立していないのだ。
ネットに自作の詩を投稿する少年は、ある日動画投稿サイトで美しい
少女を見つける。しかし、すでに少女はこの世におらず、彼女と心中
しようとして死にきれなかった若者・ジュリアンが少年の前に現れる。
インターネットでワールドワイドにつながっているはずなのに、自分
自身は田舎町から外に足を踏み出す勇気はない。ネットの中こそが彼
の真実で日常は平凡極まりない仮の姿。そんな輪郭からは、少年がお
かれた閉塞感のみが伝わってくる。
ネットに没頭するあまり頭の中が妄想に支配されていく、それでもな
お理性が現実の世界に引きとどめている。映画はその境界線をあいま
いにして、見る者の意識を混乱させようとする。その試みは成功し、
結果として「なんかわけのわからない体験をした」という印象しか残
らない。それはこの作品に答えを求める気持ちをあざ笑い肩透かしを
食らわすかのような、つかみどころのない消化不良感。感覚は刺激し
ても決して感情や想像力にまで訴えてこなかった。
(福本次郎)