◆あくまでも子供向けで、TV感覚で気軽に楽しむ作品(30点)
松谷みよ子のロングセラー児童文学が、劇場版の映画として登場。アニメ、CG、実写の融合とのキャッチコピーだが、実態はアニメパートと実写パートにくっきりと分かれていて、この内容で“融合”とまで呼ぶのはちょっとズルい。山桜市では、死神からのメールを受信したものが連れ去られてしまう事件が頻発。自称怪奇現象専門の探偵で、中学生のハルは、行方不明になった妹のマイを探して、第一の被害者の少年・リュウの友人のカオル、カオルのクラスメートの少女ジュンと共に、不気味な廃墟の洋館、通称「怪談レストラン」に向かう…。
冒頭のアニメパートは約10分。ここでは死神メールについてのざっくりとした説明がある。その後、怪談レストランの支配人こと闇のギャルソンがレストランについて解説するが、唐突に実写になるので唖然とした。こんなに不自然な移行なのに、実写とアニメの融合などと謳っていいのだろうか。しかも実写パートの役者ときたら、美少女コンテスト・グランプリの工藤綾乃を筆頭に、モデルや歌手、お笑い芸人など、俳優を本業としないメンバーが中心。おかげで、ほとんど演技と呼べるしろものではない。物語はバイオリンが得意なカオルが重要な鍵を握り、怪談レストランから死人の町へと誘われ、死神とその悪意の正体を暴いていくのだが、シリアス度は極めて低く、演出はライト感覚。ドタバタ喜劇のような、楽しいお化けを見ていると、文句を言う気も失せてしまった。ただ、死神が携帯の写メを使って闇の世界へと人々を引きずりこむ設定に、イマドキ感が漂っているのは、ちょっと面白い。エンマ大王や占いガラス、解剖模型などのお化けがにぎやかに登場するが、髪が伸びるおきくちゃんは、意外な形で活躍する。とりあえず伝統ある東映アニメーションが製作していること、「感染」「シャッター」などの本格ホラーを手掛ける落合正幸が監督を務めていることを付け加えておくが、あくまでも子供向けで、TV感覚で気軽に楽しむ作品といえそうだ。
(渡まち子)