◆何者も恐れず立ち向かい、悪党どもは容赦なく排除する。しかし、法に代わって犯罪者を裁く男たちの活躍を描く一方、コミカルな要素を盛り込んで冷血の制裁人というイメージを脱却させ、大量の死という血なまぐささを中和する。(50点)
何者も恐れず立ち向かい、悪党どもは容赦なく排除する「処刑人」たちの、優雅で洗練された身のこなしが圧倒的にクールだ。特にリボルバーに1発だけ銃弾を込め、殺し屋同士が互いに銃口を向けあってトリガーを引きあう“対面型ロシアンルーレット”は、どちらが先に撃たれるか究極のチキンレースなのになぜか噴き出してしまうような雰囲気。映画は法に代わって犯罪者を裁く男たちの活躍を描く一方、コミカルな要素を盛り込むことで冷血の制裁人というイメージから脱却させ、人が大量に死ぬという血なまぐささを中和している。
引退して田舎暮らしをしているマーフィとコナー兄弟にマフィアから挑戦状が送られてくる。ボストンに戻る途中ロミオという仲間を得て、さっそく中国人の麻薬組織を皆殺しにし、マフィアのボスを追う。
彼らと並行して警察・FBIも捜査をするのだが、みな兄弟に好意的で本気で事件を解決するより、彼らの力を借りて犯罪組織を壊滅させようと目論んでいる。特にユーニスという女捜査官が抜群の観察眼で犯人像を絞り込んでいく場面が笑えた。死体の山を前に彼女が真相を推理するのだが、そのあたり理詰めに解説するのではなくところどころユーモアを交えるので、この自信満々の女捜査官がチャーミングに見えてくる。また、襲撃前にマーフィとコナーが些細なことで喧嘩するなど、ヒーローものとはずれたセンスが光っている。
やがてマーフィ、コナー、ロミオの3人はギャングを背後で操っている老人の存在にたどり着く。その老人こそは兄弟の父・ノアを刑務所に送り込んだ張本人・ルイ。突然やってきたノアも加えて4人はルイのアジトに乗りこんでいく。処刑人たちが両手に構えた拳銃で次々とチンピラをぶち殺すのだが、青みがかった映像はスローモーションに彩られ、飛び交う無数の弾丸が破壊と殺りくのシンフォニーを奏でる。スタイリッシュな中にも肩の力を抜いた演出は、既定の枠に分類しがたい話法。少し気の抜けたところがユニークだった。
(福本次郎)